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はじめに 5人の部下を動かすことを考えてみてください。業務に精通していれば具体的で適切な指示をすることによって動かすことができるでしょう。加えてコミュニケーションが上手であれば完璧です。では、100人の部下を動かすことを想像してみてください。業務に精通しているだけではいくらコミュニケーションがうまくても適切に指示をするのは困難です。では、何が必要なのでしょうか? 60年前にハーバード大学のロバート・カッツ教授がこの問題の答えを示しました。それが本書のテーマである概念化スキルです。カッツ教授は概念化スキルを「企業を総合的にとらえることのできる能力」としたうえで、組織の諸機能の相互関係を明確に描けることだと説明しています。つまり、100人の部下を動かそうとすれば、誰にどのような指示をすれば、それがうまく相互作用を引き起こすかを考えられるスキルが概念化スキルです。病院組織もそうですが、組織は階層化されていますので誰に指示するかは比較的固定化されています。そのなかでどのような指示をすれば全体がうまく動くかを考えることがポイントになります。 このポイントは「本質」と呼ばれます。 本質とは、「原因や現象の裏にひそむ、それらを引き起こしている真因」のことです。100人の部下全体が動くという現象を引き起こすのは何かを考えることが本質を考えることです。ところが本質は目に見えません。ここが難しいところです。 著者は、「本質にこだわる」をコンセプトにしたマネジメントのトレーニングブランドPMstyleを展開していますが、PMstyleでは、抽象的/具象的、大局的/分析的、主観的/客観的、直観的/論理的、長期的/短期的という5つの思考軸で思考を動かすことで本質を見極めていく「コンセプチュアル思考」を提唱しています。本書では第3章でコンセプチュアル思考はどのようなものか、第5章で具体的な事例を通じてどのように使うかを説明しています。本書がコンセプチュアル思考による概念化スキルを身につける一助になれば幸いです。2015年8月好川哲人

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