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 この本には「文書管理」を通じて、私たちの仕事を標準化し、可視化し、PDCAサイクルを回して、質の高い医療をめざしていくことの大切さが書かれています。単なる文書管理のハウツー本ではありません。 私が1999年にNDP(National Demonstration Project)活動に武蔵野赤十字病院から参加した時に、監修の棟近先生と出会いました。NDP活動では病院と大学や企業の品質管理の専門家が集まって、医療安全を目的に改善活動を推進してきましたが、QMS-H研究会はその流れを基調にさらに発展してきました。QMS-H研究会は棟近先生のリーダーシップのもと、活動を現在も継続しており、NDP活動時代は学生だった金子先生や佐野先生、QMS-H研究会発足当時は一病院の職員だった田中先生が本書をまとめられたことは、活動を近くでずっと見てきた私にはとても感慨深いものがあります。 私たちが活動を始めた頃、医療は個別性が高く、工業製品と同じような標準化は困難という意見が多く出されました。それに対し、私たちは患者や疾患の経過が個別的なのは当然で、私たちが標準化しようとしているのは、個別性に対応する医療や医療者であり、医療者の負のバラツキを少なくすることが大きな目的であると答えてきました。クリニカルパスもその手法の1つと思われますが、QMS-H研究会は病院のすべての業務を対象に、仕事をPFCに描き込み、仕事を安全に実施できるよう教育を行い、内部監査によりプロセスやアウトカムを評価するといったことを病院に定着させるための仕組みを検討してきました。そしていくつかの病院では具体的な成果をあげ、本書でも紹介しています。 医療が高度化する一方、医療資源には限界があり、質の高い医療提供を保証するためには、組織としてPDCAサイクルを回し続ける必要があり、その仕組みを構築する上で、本書がお役に立てることが、QMS-H研究会で汗を流してきた多くのメンバーの願いでもあります。 2017年6月 日本赤十字社医療事業推進本部 総括副本部長 矢野 真 4

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