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 臨床倫理については、いろいろな考え方がありますが、本書では以下のように定義します。 「その患者の意思や希望を医学的にも社会的にも妥当な範囲でできるだけ尊重し、実現すること」その患者:今、あなたが、担当している患者のことで、一般論ではありません。意思や希望:患者が自律性をもって(他の誰の意見でもなく)真に望んでいることです。これを“しっかりとした意思”と呼びます。医学的妥当性・社会的妥当性:医療者の視点からも一般社会からの視点からも問題がないことを意味します。尊重し、実現すること:今後の治療方針、診療やケアに反映させることです。 われわれが、日常行っているすべての診療やケアは、患者の意思、医学的妥当性、社会的妥当性の独立した3つの因子が関係しています。そして、通常、特に意識することなく行っている診療・ケアは、その患者の意思(しっかりとした意思)を尊重しつつ、医学的にも社会的にも妥当な範囲内での行為ということになります。図1に、患者の意思、医学的妥当性、社会的妥当性の3つの因子の関係を示します。3因子をすべて満たしているG領域が日常的に行っている診療・ケアが属している領域となります。図1は臨床倫理を3因子の視点から考える基本となる図ですので、今後、本書では、臨床倫理の3視点図と呼びます。 一方、3因子のうち、一つでも欠いた診療・ケアであれば、臨床倫理的課題があることになります。たとえば典型的な臨床倫理的ジレンマである治療拒否の問題は、患者の意思を尊重すると医学的妥当性を満たさなくなることが多く、臨床倫理の3視点図において、E領域に属する可能性が高くなります。臨1臨床倫理の3つの視点12

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