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13第1章導入 コミュニケーションエラーはなぜ起こる? また、表情などの非言語的手がかりは、意識はしていないでしょうが、私たちが育ってきた文化の中で体得した経験(広義には知識と考えてよいでしょう)があるはずです。さらに、医療についての話をするのであれば、医療に関する知識、そこで使われる専門用語に関する知識も有していないと、符号化や復号化はできないことになります。したがって、符号化・復号化するときには「知識」が使われているといえるわけです。 3 文脈・背景の共有 受け手が伝達意図を知るには、メッセージだけではなく、明示的にメッセージとして伝えられない「文脈・背景」が重要な役割を果たしています。 例えば、発熱した患者が術後であり、感染症を起こしてしまう可能性があった場合、発熱したということは感染症の疑いがありますから、重大なことになるでしょう。そのため「◯◯さんが発熱しました」というメッセージは、患者の容態を伝えるコミュニケーションとして重要な意味をもってきます。術後の患者が発熱をした場合、例えば次のような会話が想像されます。看護師「〇〇さんが、発熱しました」医師「 えっ、そうですか。うーん、じゃあ、血液をとって、CRPをとりあえずみましょう」 この会話1の中には、感染症という言葉は一言も出てきませんが、看護師も医師もこの患者が手術をしたという事実を共有していたため、このようなコミュニケーションが成立するのです。そうでなければ、その体温にもよるでしょうが、それほど問題とする必要がないかもしれませんし、わざわざ医師に伝える必要もないかもしれません。患者が術後であるという背景情報を知っているかどうかによって、「発熱しました」というメッセージの伝達意図の理解は変わってきます。 仮に、手術をしたという事実を看護師は知っていても、そのときの宿直医が知らないのであれば、看護師は次の会話2のように、手術をしたという事実を3会話1

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