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3はじめに 日本医療マネジメント学会の医療安全分科会では毎年1回、セミナーを開催しています。全国から80名以上の方々が参加されますが、その際によく聞こえてくる声として、「担当者が3年くらいで交代することもあり、医療安全研修のテーマ選定に困る」「なかなか参加してくれない人たちがいる」「研修内容が現場に活かされているのかどうか」などといった事柄があります。 特に病院全体を視野に入れた研修となると、どこに焦点を置いたら良いのかと、困る方もおられるでしょう。また、職種別で見ると、最も患者のそばにいてケアの実施者である看護師への医療安全教育は常に大きな課題ですし、医師がなかなか参加してくれないという悩みもよく伺います。 担当者がせっかくがんばって研修をしても、参加者がやらされ感満載の態度をとったり、居眠りされてしまうようでは、実施側のモチベーションも下がります。 当書籍では、そんな困りごとにこたえるべく、現場で自ら同じように悩みながら試行錯誤しつつ研修実践をなさっている方々に、それぞれの取り組み・工夫をご執筆いただきました。 第1章は、医療安全の「い・ろ・は」として、医療安全研修の基本的な考え方を示していただきました。 第2章は、医療安全研修実践例です。執筆は、日本医療マネジメント学会学術総会(2018年、2019年)と、日本医療マネジメント学会雑誌において医療安全に関する取り組みを発表された皆さんにお願いしました。 研修対象は全職員、看護部、医師、コメディカルと幅広く、研修実施主体も、医療安全管理者だけでなく、各部署のメンバーが一緒に取り組んでおられる例も多数あります。それぞれ、現場のどんな課題に対して、どのような取り組みをしているか、また今後の課題について触れていただきました。 2020年春先からの新型コロナウイルス感染症対策として、厚労省より5月に、「医療法で規定された委員会及び研修等について、現に支障が生じている場合には延期又は休止等の措置をして差し支えない、ただし当該支障がなくなり次第、速やかに当該措置を見直すこと」との通達があり、医療安全に係る職員研修もその中に含まれています。 しかし、医療の安全を保つためには感染症対策下でも、なんらかの形で教育を継続していく必要はあります。新入職員研修もままならず、eラーニングや動画視聴に取り組んでおられる施設も多いと聞きます。 今回ご執筆いただいた内容は、基本的に、新型コロナウイルス感染症対策以前の取り組み内容ですが、医療における安全の課題は普遍的なものであり、研修手法は異なっても、課題をどう見つけ、それをどう教育していくかという考え方の根幹は変わりません。 当書籍を通じて、現場ならではの困りごとへの工夫に満ちた研修や対応のしかたが、研修担当者の皆さまの引き出しの1つに加わればと思います。 2020年9月日本医療マネジメント学会 医療安全委員会 委員長坂本すが

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