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経損傷もあります。採血直後の痛みに対しては、直後より穿刺部位や患者の訴えについて詳細のカルテ記載が求められるため、記載の方法も学んでおくべきです。 自分は、自分だけは痛い目にあわない、そう思いたいのですが、なかなかそうはいきません。研修をしないと患者さんも自分自身も痛い目にあいます。 このように、研修にあたって習得すべきものは、採血に関する知識、技能とともに、さらに病院ごとに違い、かなり多岐にわたります。スキル(技能)と知識の習得 習得すべきこととして、手技自体についてのテクニカルスキルと、患者とのコミュニケーションなどノンテクニカルスキル、これら2つの技能(表1)と、知識、例えばどこの血管をねらうべきか、何のための採血か、スピッツ内凝固を防ぐための方法、スピッツごとの特性なども含まれます。鼠径部からの採血は、テクニカルスキルに含まれますが、内側から静脈、動脈、神経が走っているという知識がないと、この部位からの採血はできません。 採血を失敗した時の言い訳は、ノンテクニカルスキルに含まれますが、言い訳を知識として知っていなければ形にはなりません。テクニカルスキルもノンテクニカルスキルもともに知識とスキルは一体化したものです。同時に習得しておかなければ、腕が良いとは言われず、患者には問題視されます。 ノンテクニカルスキルは臨床での実践に必要なテクニカルスキルを補完する役割を担っており、テクニカルスキルとノンテクニカルスキルは、決して対比的なものではなく、むしろ2つのスキルが相互に調和したとき、そのどちらのスキルもパフォーマンスが向上するという関係にあります。テクニカルスキルとノンテクニカルスキルの習得 スキル (技能)は研修により習得できます。研修を大きく分けると、テクニカルスキルを習得するための研修とノンテクニカルスキルを習得するための研修の2つがあります。 テクニカルスキルは、注射を例にあげたような技術習得を目指す研修です。 ノンテクニカルスキルは患者に対する声掛けだけでなく、スタッフ同士のコミュニケーション、相互支援、状況認識、意思決定、リーダーシップなどチームワークを向上させる研修もあります。しかし、自分のスキルが他より劣っているとは感じていないことが多く、自ら研修に参加したいと思わないのが現状です。表1 テクニカルスキルとノンテクニカルスキル2つの技能概念具体例テクニカルスキルTechnical skill専門的な医療知識や医療技術など手先のワザ・効率の良い手技手術・内視鏡・カテーテル操作点滴・採血・専門知識ノンテクニカルスキルNon-technical skill人間と人間の関係性を重視した認知的、社会的なスキル挨拶・声掛け・リーダーシップ懸念/責任・声出し・情報共有11第1章 医療安全研修の「い・ろ・は」

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