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2 序 2020(令和2)年の診療報酬改定の特徴は、勤務医への働き方改革への対応について、診療報酬として公費126億円程度、地域医療介護総合確保基金として公費143億円程度が盛り込まれたことである。 改定率は、消費税財源を活用した緊急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応に対しての+0.08%を含めて医師の技術料にあたる「本体部分」を+0.55%引き上げた。一方、薬と医療材料の公定価格「薬価」を1.01%引き下げ、全体改定率は-0.46%となり、4回連続のマイナス改定であった。 度重なるマイナス改定で、コストカットを強いられた医療機関は納入業者にマスクなどの医療材料等の値下げを要請した結果、国内メーカーは相次ぎ生産から撤退。現在では輸入製品が8割を占めている。今回の新型コロナウイルスによるマスク不足などは、コスト削減がもたらした輸入依存の結果ともいえる。 治療で重要なセファゾリンナトリウム注射用製剤(抗菌薬)も、薬価下げの影響で人件費の安い海外から原材料を調達しているが、抗菌薬の出発物質であるテトラゾール酢酸(TAA)は世界で唯一中国メーカーだけが製造している。しかし環境規制の問題で全世界的に供給停止になったことがあり、供給に不安が残っている。フランスでは薬価値引きが許容限界を超えたことで薬が不足し、患者が薬を入手できなくなる問題が実際に起こっている。これはわが国においても発生する可能性があるため、サプライチェーンや調達拠点を考えなおす時であると考える。国としても医薬品原料確保と医薬品原料製造工場や医療材料等の国内製造を支援する政策が必要である。 新型コロナウイルスは医療経営にも大きな影響を与え、実に5割以上の医療機関で患者が減少した。中でも深刻なのが「新型コロナウイルス

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