まえがきⅱ 本書は、表向きは(いや、真剣に)医学の基礎『解剖学・生理学』を解説したものです。“表向き”と表現したのには訳があります。その理由を以下に述べます。 解剖学や生理学というのはとにかく難しいし、学習者の悩みの種です。「勉強しないと」と頭ではわかっていても、覚えることが多い、授業がわからない(そして指導者も落ち込む)、そういった姿は教育現場では日常茶飯事です。書店では、基礎医学や看護コーナーにこの分野に関する本が所狭しと並んでいます。良書がたくさんあり、私もずいぶんお世話になりましたが、“最後まで”読み通せたことがほとんどありません。性格が飽きっぽいから、それも理由の一つですが、いかがでしょう、医療系の読者の方であれば、同じような経験を持つ方も多いのではないでしょうか。苦にならず“最後まで”学べる(ついでに記憶に残る)ことの鍵は何かと考えたとき、それは「おもしろい」かどうか、これに尽きるとの考えに至りました。 全国で講義をする機会に恵まれ、その都度、授業後に学生達とよく話をしました。そんな中、あることに気付きました。それは、「方言の力」です。私は京都で生まれ育ちましたから関西弁を使います。以前は関西以外の場所で授業をするとき、自分の関西弁を胸中で恥ずかしく思っていました。ただ、“自分の言葉”を大切にしたい思いから、とくに変えずそのまま話をしていました。しかし、恥ずかしいという思いは杞憂でした。関西弁はむしろ強烈な存在感とインパクトを残し、学生の記憶にしっかりと焼き付けられる武器なのだと思うようになりました。なかでも「関西弁=おもしろい」という印象は、万人ではないものの少なからずあるようです。それは上方お笑い芸人を中心に関西弁で笑いをとる番組が関西地方以外でも放映されていることなどが影響しているからでしょう。 こうした経験を通じ、「会話」と「方言(関西弁)」の良さを生かした、巷で出版されている本とは一線を画した、風変りな作品をつくりたいと
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