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2なぜ心リハが必要なのか?心リハの定義 「なぜ心リハが必要なのか?」を説明する前に,心リハの定義および基本的概念について概説する. 心リハの定義は,「心疾患患者の最適な身体的,心理的,社会的状態を回復および維持し,基礎にある動脈硬化の進行を抑制し,さらに罹病率と死亡率を低下させることをめざす多面的介入」とされる1).心リハの基本的概念として従来,「3つの目標と3つの構成要素」が挙げられている2).3つの目標は,「①身体的・精神的デコンディショニングの是正(運動耐容能増加),②冠危険因子是正と二次予防(長期予後改善),③良質な社会生活援助とQOL向上(快適な生活)」であり,これを達成するために,多職種チームが医学的評価に基づき,「①運動療法,②患者教育,③カウンセリング」という3つの構成要素を実施する(図1A).しかし,近年の疾病構造の変化によりこの基本的概念は変化しつつある(後述).心リハの定義と時期的区分1aA心リハの時期的区分 心リハはその実施時期から「急性期(第Ⅰ期Phase Ⅰ)」,「回復期(第Ⅱ期Phase Ⅱ)」,「維持期(第Ⅲ期Phase Ⅲ)」の3つの時期に大きく分類され,さらに回復期は「回復期早期(Early Phase Ⅱ)」と「回復期後期(Late Phase Ⅱ)」に分類される(図2).急性期心リハはCCUまたは病棟において監視下で実施され,その期間は通常発症後4日〜約1週間以内である.回復期早期心リハは入院中に心リハ室において監視下で開始され,その期間は合併症のない急性心筋梗塞(AMI)では通常発症5日目〜2週間程度であり,退院後は外来心リハでの監視下運動療法に引き継がれる.回復期早期心リハの時期は1980年代には発症3週間〜8週間後までと考えられ,2000年頃には発症5日〜4週間後までとされていたが,近年は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が普及しさらに短縮している.回復期後期心リハは,外来での監視下運動療法と在宅非監視下運動療法が併用されるか,または在宅非監視下運動療法が単独で実施され,通常発症後約3週間〜5カ月後頃までが想定される.維持期心リハはb心リハは単なる機能回復訓練ではなく,「長期予後とQOLの改善をめざす二次予防プログラム」である.急性期死亡率が低下した結果,退院後の再発/再入院予防・長期疾病管理の重要性が増している.慢性多発併存疾患保有患者の増加により長期的・多面的な疾病管理の必要性が増し,超高齢患者の増加に伴いフレイル・要介護化防止とQOL向上方策が求められている.これらへの解決策は予防・疾病管理・体力保持であり,今まさに心リハが求められる時代となっている.

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