T160270
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   わが国の循環器診療の変貌と心臓リハビリテーション 近年,わが国の疾病構造に大きな変貌が生じつつあります.まず第1に救命救急体制の充実や急性期治療法の進歩により,急性期院内死亡率は大幅に低下しましたが,退院後の長期予後に関しては死亡率・再入院率とも高い状態が持続しています.第2に,糖尿病や慢性腎臓病など慢性併存疾患の増加に伴い,急性期治療のみでは根治が得られず,長期的・多面的な治療最適化や疾病管理を必要とする患者が増加しています.第3に,高齢化に伴い増えつつある収縮が保たれた心不全(HFpEF)では,薬物治療の効果が乏しい一方で,サルコペニア・フレイルに対する運動╱栄養介入が必須であることが認識されつつあります.これらを踏まえると,今後のわが国の循環器診療では,退院後に再発╱再入院予防をめざす包括的疾病管理と要介護化防止をめざす運動╱栄養介入の両方の役割を包含する包括的外来心臓リハビリテーション(心リハ)プログラムへのニーズがいっそう高まると予想されます.   本書のねらいと特色 わが国ではこれまでに心リハガイドラインや標準プログラムの策定などにより心リハの質の向上が図られてきましたが,退院後に再発╱再入院予防をめざして多職種チームが実践する外来心リハの手順や運営方法については,適切な手引書・マニュアルは存在しませんでした.国立循環器病研究センター(国循)心リハ部門では1992年の部門創設以来,入院から外来に至る体系的・包括的な心リハプログラムを整備し,全国屈指を誇る多彩な心血管疾患患者に対して実践してきました.このたび,国循心リハ部門が部門創設25周年を迎えることを機会に,これまでに構築してきた国循心リハプログラムのすべて,すなわち国際的に通用する高いレベルの知識や技術,体系化された運営方法,長年にわたり蓄積してきた現場でのノウハウなどを「国循心リハ実践マニュアル」としてまとめました. 本書の特色は,①入院から外来に至る包括的心リハプログラムの体系的なシステムが時系列に沿ってわかりやすく記述されていることと,②国循の心リハ現場で実際に使用されている実施計画書・個別面接シート・患者向け説明文書・リーフレットなどの実例が豊富に掲載されていることで,心リハ現場でただちに役立つ内容となっています.本書がわが国における心リハの普及と質の向上の一助となれば幸いです. 最後に,本書の執筆を担当いただいた国循心リハ部門スタッフおよびOBの皆様に感謝しますとともに,刊行に際して多大なご支援をいただいたメディカ出版編集局・鈴木陽子様に深謝申し上げます. 2017年7月序文:本書のねらいと特色後藤葉一公立八鹿病院 院長元・国立循環器病研究センター循環器病リハビリテーション部 部長日本心臓リハビリテーション学会 理事長(2014~2018年)   1   2

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