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10胎児循環 胎児循環の特色は,①胎盤があること,②動脈管が開存していること,③肺への血流が少ないこと,④静脈管が開存していること,⑤卵円孔が開存していることである(図1).胎盤の血管抵抗は低く,左室+右室の拍出量(総拍出量)の40%が胎盤に行く.ちなみに,右室は250mL/kg/min,左室は200mL/kg/min拍出する.心拍出量を体表面積で割った値,心拍出係数に換算すれば,満期3kg(体表面積0.21m2)の胎児は右室が3.6L/min/m2,左室が2.9L/min/m2拍出している.この値は新生児や成人と同じである胎児─新生児の循環と病態2大動脈肺動脈肝静脈肺動脈右房右室左室下行大動脈下大静脈酸素飽和度 40~60%酸素飽和度 65~70%酸素飽和度 80%門脈門脈肝臓静脈管臍帯動脈臍帯静脈左房卵円孔動脈管図1│胎児循環胎盤で酸素化された血液は,臍帯静脈から静脈管を経由して下大静脈に還ってくる.下大静脈に還ってきた血液は卵円孔を通って主に左房へ流れ,左室を経由して上半身や脳へ送られる.上大静脈に還ってきた静脈血は右房から右室を経由して肺動脈に駆出され,動脈管を経由して下行大動脈に流れる.肺へ流れる血液はわずかである.下行大動脈から臍帯動脈へ酸素飽和度が低い血液が送られる.臍帯静脈の酸素飽和度は80%,下半身や上半身から還ってくる静脈血酸素飽和度は40%.下大静脈の心房入口部で70%に上がり,その血液の大部分が卵円孔を通って左房に行くので,左室や上行大動脈の酸素飽和度は65%となる.右室や肺動脈の血流は,上半身からの酸素飽和度40%の血液の大部分と,下大静脈からの70%の血液とが混合して55%となったものである.その血液は大部分,動脈管を通って下行大動脈へ流れる.下半身へ流れる動脈血酸素飽和度は60%である.
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