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8頻度 軽症の疾患を含めれば,先天性心疾患は100人に1人の割合で発生する.新生児期に診断される先天性心疾患の頻度を表1に示す.最も頻度が高いのが心室中隔欠損である.心房中隔欠損症は新生児期には診断されないことがほとんどなので,実際には頻度はもっと高い. 欧米の一般人口で最も頻度が高い先天性心疾患は,大動脈二尖弁といわれる.幼少期には心雑音もなく,診断されないことが多い.多くは成人以降に心雑音で診断される.わが国の大動脈二尖弁の頻度は欧米より少ないが,それでもそれほどまれな病態ではないことがわかってきている.正確な頻度はいまだ不明である. チアノーゼ性心疾患ではファロー四徴症,大血管転位症が多い.病態と発症年齢 新たに発見される心疾患の頻度は,患者の年齢層によって異なる. 新生児−乳児期発症の疾患は,大きな左−右短絡のある疾患やチアノーゼ性心疾患が多い.新生児期に発症する疾患には,チアノーゼで発症する大血管転位症,チアノーゼや呼吸促迫で発症する総肺静脈還流異常症がある.動脈管から肺動脈への血流に依存する疾患群もチアノーゼを認める.純型肺動脈閉鎖症,ファロー四徴症+肺動脈閉鎖,三尖弁閉鎖症+肺動脈閉鎖などである.体循環を動脈管に依存する左心低形成症候群,大動脈縮窄複合も,チアノーゼをさまざまな程度に認める(表2). 乳幼児−小児期に発症する疾患は,中程度の左−右短絡のある疾患が多い.乳児期早期には,心室中隔欠損(大欠損),大動脈縮窄複合,大動脈肺動脈窓,総動脈幹症などが,肺血流増多による哺乳力低下,呼吸促迫で発症する.ファロー四徴症,三尖弁閉鎖症は,この時期にチアノーゼや低酸素発作で発症する. 乳児期には,左−右短絡疾患(心室中隔欠損症,房室中隔欠損症,動脈管開存症など)の短絡量が多いものが発症する. 幼児−小児期には,心室中隔欠損の中欠損などが発症する.心室中隔欠損に大動脈弁の逸脱の合併が発見されることもある.左−右短絡疾患や弁疾患が健診などで心雑音により先天性心疾患の頻度1表1│心疾患病型別頻度(文献1より改変)疾 患症例数%心室中隔欠損(VSD)43356.6VSD+他の左右短絡314.0肺動脈狭窄(PS)749.6心房中隔欠損415.3ファロー四徴354.5VSD+PS60.8動脈管開存283.6大動脈縮窄・離断212.7完全大血管転位172.2心内膜床欠損141.8両大血管右室起始101.3総肺静脈還流異常91.2脾形成不全70.9右室低形成60.8単心室50.6左室低形成50.6三尖弁閉鎖,エプスタイン奇形,総動脈幹遺残,大動脈狭窄,修正大血管転位,末梢PS各3各0.4僧帽弁閉鎖不全20.3心筋症,三心房心10.1僧帽弁狭窄・閉鎖不全10.1病名不詳81.0ただし,脾形成不全=無脾症または多脾症,右室低形成=純型肺動脈閉鎖

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