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はじめに がんは1981年以降,日本人の死因の第1位を占めています.2006年に成立したがん対策基本法に基づき策定されたがん対策推進基本計画では,医師その他の医療関係者は,国および地方公共団体が講ずるがん対策に協力し,がんの予防に寄与するよう努めるとともに,がん患者の置かれている状況を深く認識し,良質かつ適切ながん医療を行うよう努めなければならないとされています.また,地域がん拠点病院での5大がんに関する地域連携クリニカルパス(以下,パス)の整備が義務づけられ,拠点病院と地域医療機関との間で,パスを用いた協力体制の構築が必須となりました. 当院は2009年に大阪府がん診療拠点病院に指定され,2010年には国のがん診療連携拠点病院に指定され,専門的ながん医療の提供,地域のがん診療の連携協力体制の構築とがん患者に対する相談支援および情報提供を行っています.急性期病院として在院日数の短縮化,地域包括ケアを実践していく中ではパスを使用して治療を行い,早期回復を目指し地域で療養を行えるように取り組んでいます.パスは,従来の「ばらつきがあった医療」の治療や検査の標準的な経過を,スケジュール表のようにまとめた診療計画書です.治療に携わるすべての医療従事者が患者の診療計画を共有することにより,医療の質の向上を図ることができます. このようながん看護の実践において,私たち看護職はただパスに則った看護を行うのではなく,患者さん一人ひとりに応じたきめ細かい観察や看護ケアを行うことが重要であると考えています.そのためには疾患別,治療別,症状別の標準看護計画とパスに示したケア項目との関連をしっかり理解することが重要です. 本書は,がん看護を実践している消化器外科の看護師長を筆頭に現場の看護師たちが,活用しているパスと標準看護計画の関連を説明したものです.第1部ではそれぞれの疾患と周術期を中心とした看護,第2部では症状緩和や生活指導など,外科領域における看護について述べています.図表をふんだんに使用し,できるだけ平易な文章を用いて,わかりやすくまとめたものです.本書をまとめることで,消化器外科の看護師たちは患者さんやその家族へ安心をもたらすことに確かなやりがいと自信をもつことができました.同じような看護を実践している看護師の皆さんに共感していただき,実践の手引きとしてお役に立てば幸いです.とくに,新採用の看護師の皆さんにとっては,学習のマニュアルとして重宝できるものと期待しています. 最後に,本書の制作にご協力いただきました外科の先生方に感謝申し上げます. 2017年4月独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 看護部長 伊藤 文代

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