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はじめに 近年、看護学の発展は目覚ましく、それにともなって、臨床現場での看護師の役割も高度化しています。患者さんへの対応も知識なくして遂行することは困難で、特定行為研修や特定看護師制度、認定看護師制度などの教育の機会も増えています。そのため、多くの分野で医学的知識を深めるための教科書が必要であることは、言うまでもありません。一方、医学・医療の分野は社会福祉の分野との連携が求められるようになり、疾患を治すことに終始する医療形態から、疾患や外傷の結果として生じる障害への機能的アプローチと生活再建が重視される時代へと転換しています。そして、障害の治療と社会福祉サービスの提供は、医師のみによる決断では成し得ず、看護師や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士をはじめとする多くの医療専門職種の関与と多職種チームによる相互協力が不可欠です。 障害にはさまざまな種類の身体・精神障害が区分され、それぞれに対して効果的な治療手段とリハビリテーションが求められます。麻痺や切断といった障害は理解しやすいですが、「高次脳機能障害」となると、その言葉を聞いただけでむずかしいというイメージを抱く看護師も少なくないと思います。しかし、決してめずらしい障害ではなく、高齢者の多くに認められるもので、すべての専門職種に理解を深めてほしいものです。 本書は、はじめて高次脳機能障害を勉強するという専門職種に対して、可能な限り短期間に理解を深めていただくことを目的として企画し、それを達成することができたと自負しております。症例をわかりやすく提示して個々の高次脳機能障害に興味をもっていただき、そのうえで、それぞれの障害の定義や損傷部位を容易に理解し、最後に評価と治療法を学習するという形式をとっています。数ある教科書のなかで、高次脳機能障害のリハビリテーションについて具体的な方法を説明したものは少なく、その点において本書は多くの専門職種の方々に満足していただけるものと思います。 高次脳機能障害に悩んでおられる障害者とそのご家族に対して、多くの医療福祉関係者が熱意をもって取り組んでくださることを心からお願い申し上げます。 2018年2月椿原彰夫

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