51神経内科疾患を理解する1神経内科で扱う疾患 なかには精神科疾患が紛れ込んでいる場合があり,それらを区別し,適切な診療科に誘導する必要もある.さらに傍腫瘍性症候群や膠こう原げん病びょう・糖尿病・抗がん剤に伴う末梢神経障害や胃全摘後のビタミンB12欠乏に伴う症状など,他科疾患の合併症として神経症候を呈するものもあり,背景因子の把握も重要である. また歩行・姿勢に異常をきたす疾患も多いため,患者の入室時から診察は始まっている.最近では電子機器の発達により画像的な記録が可能となっており,けいれんや不随意運動などの場合,言葉で説明するよりもはるかに説得力をもつため,そのような記録が受診時の参考になる. 神経疾患の診療において,病歴聴取はきわめて重要である.看護スタッフの聴取した病歴によって,診断の糸口がつかめたことがまれならずある. 病歴聴取の際には,経時的に症状の変化を確認する.前医での診断名はかならずしも正確ではないことがあるので,診断名に引きずられないように,謙虚に患者の発言内容に耳を傾ける必要がある.しかしながら,患者もつねに正確に記憶しているとは限らないし,故意に不都合な情報が隠される場合もある.そのため,たんなる傾聴では不十分であり,疾患を想定しながら症状の有無ならびに服薬状況,嗜好品やサプリメントの使用状況などについて確認していく姿勢が必要である.また家族歴の聴取の際には,類縁疾患の有無にとどまらず,common disease(通常疾患)の状況や血族結婚の有無についても確認する必要がある.病歴聴取のコツ 疾病としても,脳血管障害から免疫性神経疾患・神経変性疾患・筋肉疾患と幅広い(表2).脳血管障害や神経変性疾患は高齢になるとともに頻度が増加する.また,てんかんの有病率は世界各国で約1%弱とされているが,最近では高齢になって初発するてんかんの増加が指摘されている.脳血管障害は,日本人を含めた東洋人には多い.欧米では脳梗塞B背景因子の把握病歴聴取神経内科の扱う疾患4A高齢になると頻度増加
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