643章 脳血管障害64脳の血管(ほとんどの場合は動脈)がなんらかの原因で閉へい塞そくして、脳の細胞に栄養や酸素が行きわたらなくなり、最終的に不可逆的な障害をきたす疾患。障害部位によりさまざまな神経症状を生じ、機序によりラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症に大別される。脳のう梗こう塞そくcerebral infarction1. 発症時の症状 意識状態(JCS〔Japan Coma Scale〕でどの程度か)、片麻痺(左右のどちらかを必ず確認)、感覚障害(左右のどちらかなど部位を確認)、構音障害や失語の程度など。2. 安静度 脳梗塞急性期は血流動態が不安定なため、ギャッチアップを禁止あるいは制限していることがある。必ずその時点での安静度の指示を確認し、安易に頭部を挙上しないようにする。3. 頭部画像検査(CT、MRI) 脳梗塞の大きさや部位、閉塞している血管の部位、脳梗塞の病型などの大まかな情報を可能な範囲で確認する。1. 意識レベル JCS、GCS(Glasgow Coma Scale)などを用いて評価。2. 神経症状 上下肢の運動麻痺(バレー徴候、ミンガッチー二徴候、徒手筋力検査〔Manual Muscle Testing:MMT〕)、感覚障害、構音障害、失語の程度などを評価。3. バイタルサイン (血圧、心拍数、酸素飽和度、体温) 血圧や心拍数の急激な変化は脳梗塞再発を、酸素飽和度低下や体温上昇は誤ご嚥えんによる肺炎を疑う。ベッドサイドに行くに確認前!ベッドサイドの!観察項目●意識障害の増悪● 神経症状(運動麻痺、構音障害、失語など)の増悪や新規神経症状の出現●バイタルサインの急激な変化入院中のラクナ梗塞心原性脳塞栓症アテローム血栓性脳梗塞血 栓アテローム心臓から流れてきた血栓英略語・単語JCS:Japan Coma ScaleGCS:Glasgow Coma ScaleMMT:Manual Muscle Testing(徒手筋力検査)rt-PA: recombinant tissue plasminogen activator(組織プラスミノーゲンアクチベータ)CEA: carotid endarterectomy(頚動脈内膜剥離術)CAS: carotid artery stenting(頚動脈ステント留置術)●意識レベル ●神経症状●画像所見キーワード前頭葉(frontal lobe)・前頭葉は中心溝で頭頂葉と、シルビウス裂で側頭葉と分かれる。・最大の脳葉であり、外側面を前後に走行する上・下前頭溝で上・中・下の前頭回に分かれる。・内側面には帯状溝が脳梁と同様に弧状に走行しており、脳梁との間が帯状回となる。頭頂葉(parietal lobe)・前方は中心溝で前頭葉と分かれる。・側頭葉、後頭葉との境は後述の通り。・中心溝後ろの中心後回は一次体性感覚野になる。・外側は頭頂間溝により上・下頭頂小葉に分かれる。側頭葉(temporal lobe)・上方はシルビウス裂で前頭葉と分かれ、後方は頭頂後頭溝と後頭前切痕を結んだ線で後頭葉と分かれる。・頭頂葉との境界は曖昧だが、シルビウス裂の後端と頭頂後頭溝を結んだ線で分かれる。・側頭葉外側には上・下側頭溝で上・中・下の側頭回に分かれる。・下面には外側から紡錘状回、舌状回、海馬傍回がある。後頭葉(occipital lobe)・各脳葉との境は前述の通り。外側面は外後頭溝により上・下後頭回に分かれる。・内側面には鳥距溝が前後に走行し、頭頂後頭溝と合流する。・鳥距溝の上下皮質には視覚野が存在している。ちょう きょ こうかんじょうだん頭頂後頭溝冠状断矢状断鳥距溝楔部海馬傍回脳梁帯状回紡錘状回矢状断面図(内側面)しじょうだんめんず上前頭回中前頭回上側頭回上後頭回下後頭回中側頭回下側頭回下前頭回中心溝(ローランド溝)中心後溝外側溝(シルビウス裂)後頭前切痕後頭前切痕上側頭溝下側頭溝中心前回上頭頂小葉下頭頂小葉中心後回縁上回角回こうとうぜんせっこんこうとうぜんせっこん外後頭溝外後頭溝上前頭溝上前頭溝中心前溝中心前溝頭頂後頭溝頭頂後頭溝下前頭溝p.31参照p.26参照p.38参照p.35参照舌状回大 脳51章 解 剖4大だい 脳のうcerebrum● 大脳は脳の中でもっとも主要な部分。● おもな溝や裂によって前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉の4葉に分かれる。● 大脳縦裂で左右に分かれる。左右の脳は脳のう梁りょうでつながり連携している。● 大脳皮質には一次運動野、一次体性感覚野、言語野、一次視覚野など重要な機能の中枢が分布している。● 脳の重量は、男性が1,350~1,400g、女性が1,200~1,250gで体重の約2%にあたる。本書の使い方ほぼ実寸の脳のサイズ!この徴候がみられたら、先輩やドクターを呼ぼう!解剖・機能でキホンをおさえる!1ベッドサイドで最低限知っておきたいポイントをおさえる!2臨床で「動ける」ための最重要ポイントを最初の1ページに凝縮➡臨床で「動ける」ための最重要ポイントを最初の1ページに凝縮➡患者さんへの説明にも使える、かみ砕いた解説ベッドサイドでのチェックポイントを時系列で掲載必要な疾患をピックアップできるお気に入り機能付きこのページはスマホでもみられる!かんテキWeb検 索iv
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