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121.本書のねらい 高次脳機能障害者が社会生活していくうえで,重要なポイントは,社会生活を送る高次脳機能障害者自身の「自己理解」,受け入れる側の「他者理解」です(図1).障害は,個体と環境の摩擦から生まれます.ですから,“高次脳機能障害のある自己=個体”と,“受け入れる職場・家庭といった他者”との相互作用によって障害が生まれてくるものであり,自己と他者が共通理解しながら解決していくことが本質的な問題解決につながると考えています. 高次脳機能障害は,病気や事故により,ある日突然脳が損傷し,外見では以前と変わっていない状態にもかかわらず,記憶や注意といった認知機能が低下する事態に陥ります.そのため,本人は障害を実感しにくいものであり,すべてが以前のようにできると考えてしまいます.目が覚めたら,ベッドの上にいて,病院のスタッフからは高次脳機能障害が残ると言われ,リハビリが始まると「あれは危ないからやっちゃだめ」と制止されたり,「これができていない」などと指摘されたりします.しかし,本人が「ここは見たこともない病院なので,分からなくても・できな本書の使い方-より良い選択のために-問題解決一致一致事象不一致不一致トラブル自己理解他者理解図1 自己理解と他者理解の一致
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