302070610
12/14

12この隙間は大・小坐骨孔と呼ばれ、血管・神経・筋肉の通り道となります。仙棘靱帯は骨盤臓器脱の修復術で固定に用いられます。しかし、もともとはその腹側にある尾骨筋が退化して靱帯化したものです1)。本来はしっぽを振るための筋肉(尾骨)だったものが使われなくなり靱帯化したもので、尾骨筋とは分離し難く、仙棘靱帯・尾骨複合体とも呼ばれます。 仙棘靱帯の付着部である坐骨棘は、腟からの内診時に重要な目印となります。分娩の進行や骨盤臓器脱手術時に使われます。子宮頸部の高さは左右の坐骨棘を結んだ高さにあることが正常とされています。坐骨棘のすぐ内側には血管や神経が通過しています。 骨盤を正面から見ると左右に閉鎖孔という円形の隙間があります(【図2-a、b】)。大部分は閉鎖膜に覆われていますが、腹外側には閉鎖管という血管・神経の通り道があり、時に小腸がヘルニアとして陥頓することもあります。この閉鎖孔は中部尿道スリング手術でメッシュを通す際などに使われます。骨のまとめ 骨盤は骨と靱帯により強い構造を作り骨盤臓器を支えますが、隙間もあります。この隙間は臀部・陰部・下肢へ向かう血管・神経・筋肉を通すためと、膀胱・子宮・直腸の内容物を排泄するために必要です。【図2-c】では骨盤の底に大きな穴が見えます。この穴(隙間)は次の項で説明する筋肉で覆われ、排泄を制御します。骨盤の大きな隙間を埋める筋肉について解説します。【図3】では骨盤を右尾側横から見ています。まず尾骨筋(【図3-b】)、次に肛門挙筋(【図3-c】)で埋めました。これでかなり隙間は塞がれましたので支持構造としては十分に見えます。しかし、【図3-c】では生殖裂孔と呼ばれる尿道(膀胱)・腟(子宮)・肛門(直腸)の出口がぽっかり空いています。この生殖裂孔を開け閉めし、排泄をコントロールする構造も必要です。【図3-d】では尿生殖隔膜と浅在する筋群を加えました。さらに骨と骨をつなぐ靱帯により骨盤全体は覆われます(【図3-e】)。梨状筋、内外閉鎖筋は骨盤筋肉3

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る