泌尿器科医の治療対象となる臓器は、副腎・腎臓・尿管・膀胱・尿道・前立腺・精巣・陰茎です。かつてメジャー科と呼ばれていた内科や外科が臓器別に細分化されたことにより、泌尿器科が最も多くの臓器を治療する診療科となり、良性疾患から悪性疾患まで幅広い疾患と接すること、これらの疾患の診断から治療まで行うこと、薬物治療などの内科的治療と外科的治療の両者を単一科で完結すること、を合わせて考えると、泌尿器科はまさに内科や外科よりメジャーな科となったと言っても過言ではありません。これら泌尿器疾患の幅広さから、今日では泌尿器科医だけではなく、メディカルスタッフ、特に泌尿器科病棟や泌尿器科手術担当の看護師さんの仕事量も膨れ上がっています。幅広い泌尿器科疾患の中から、泌尿器科の主要な疾患である泌尿器がん(腫瘍)のみを取り上げて周術期管理についてまとめた、看護師さんを対象とする解説書は意外に多くありません。その点を鑑み、本書では『フローチャートでつながる 診断・治療・看護の流れ 泌尿器がん 術前・術後管理のすべて』と題し、泌尿器がんの術前・術後管理を分かりやすく解説しています。本書の特徴は、副腎腫瘍、腎がん、腎盂尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、陰茎がんの患者さんの、来院から退院までの流れを、疾患ごとにフローチャートでお示しした点です。まずはじめに、それぞれの疾患の解説、所見、検査、診断方法を解説し、疾患の概要を理解しやすいようにしています。そしてその後に、治療選択(手術適応)、術式選択、手術(治療法)、周術期管理・ケア、退院指導をそれぞれ解説したのち、最後に主要な手術については、クリニカルパスで看護の流れをおさらいできるよう、工夫が凝らしてあります。また、写真やイラストをなるべく多く盛り込み、理解しやすいようにしてあります。本書は、看護師さんを対象としておりますが、研修医などの若手医師も意識して構成しております。本書を通して、看護師さんと若手医師が一緒になって勉強していただくことによって、よりよい看護、医療を患者さんにご提供できる一助となることを願っております。序文2020年11月福島県立医科大学医学部泌尿器科学講座 小島祥敬iii
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