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4言えば、患者・家族を中心に置かないケアでは、在宅の患者さんの「いのち」、つまり食事、運動、睡眠、排泄への配慮が停滞または後退しているように思います。多職種のスタッフ間で意見交換や情報共有が必要な理由排泄ケアでも患者さんの疾患や心身の状態だけでなく全体像をみなければなりません。そして、全体像のなかで問題の原因を探り、それに見合った対応が必要となります。また、多職種のスタッフが情報を共有し、患者さんが地域で他人と共存できる環境を整え、地域全体で患者・家族を支えることが大切です。多職種によるチーム医療では、それぞれの専門職種のスタッフが専門性の高い独自の方法論をほかの職種のスタッフに押しつけるのではなく、患者さんの困りごとを解消するためにそれぞれがもち合わせているプロフェッショナルの知見や技術を借りるという姿勢が求められます。患者さんには家族や困ったときに助けてくれる友人、生活をともにする人がいますし、多職種でケアに携わるスタッフには同職種のスタッフがいます。どちら側も決して1人ではありません。また、患者さんの希望に寄り添ったケアを行うという目標は共通のものであっても、それぞれの職種によって視点や着眼点が違えば方法論やアプローチも違います。さらに言えば、患者さんの希望に寄り添ったケアを行うという目標は、患者さんの生きている時間の流れとともに常に変化します。だからこそ、多職種のスタッフが意見交換や情報共有を行うことが必要となるのです。患者さんを多職種の視点で多方面からみることが、患者さんの希望や思いに添った生活に近づけるような環境整備や支援につながっていくと考えます。多職種のスタッフがそれぞれの思いや考えをお互いに納得し、通じ合えるようになるためには、具体的に思いや考えを表現しながら連携をとることも重要です。一緒に考え、過ごした時間から生まれる患者へのアプローチ人は、誰もが必ず「老い」を感じるときが来ます。それは、病気がきっかけであったり、普段行っている動作がひどく疲れたり、時間がかかったりするようになり、感じることとなります。また、それまでの生活習慣が維持できなくなり、環境の変化・セルフケアの破綻が伴うと病気の症状以上に苦痛を感じるようになります。尊厳が保たれ、受け入れられ、支えられ、人間らしく生かされてこそ、その人だけの新たな物語ができてくるのではないでしょうか。そして、ケアをする人が患者さんとその時々に感じたことを一緒に考え、過ごした時間を次の物語につなぐことができれば、患者さんへの個別性のあるアプローチが生まれることにもつながります。今、生かされている私たちは、決して1人で生きているわけではありません。誰もが「自分1人では生ききれないこと」「人は人とともにあること」「人に支えられて生きていること」を知ったうえで、関係性を築かなければなりません。病棟の排尿自立と在宅の「排尿自立」

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