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むつき庵が伝えたいおむつケアと排泄ケア 排泄用具の情報館「むつき庵」を主宰し、排泄の相談を受けるなか、「排泄ケア」について語るのは簡単ではないと感じてきました。それには多くの理由があります。それを一言で語るなら、「排泄の状態は一人ひとり異なるため、マニュアル化しにくい」ということです。 よくある相談の一つに「おむつからの漏れ」がありますが、漏れないおむつの当て方を探るにしても、排尿量や水分摂取量などの排泄記録が必要ですし、身体のサイズや皮膚の状態など必要な情報はたくさんあります。しかも、「おむつからの漏れ」に困るのはおむつ交換をしている人ですが、患者さんにとっては陰部の蒸れによる痒みが問題であるのかもしれません。あるいは、尿漏れは多尿のためであり、その背景には糖尿病などの疾病があるという場合もあります。また、その人の状態を探り適切な用具などを使えばおむつ以外での排泄が可能になるため、「おむつからの漏れ」が困りごとではなくなることもあります。このように、排泄トラブルを解決するには、現状の丁寧な把握とそれに見合う対応が必要だといえます。そして、適切な対応は患者さんの身体のみならず暮らしさえも変えていきます。  「排泄ケア」にはさまざまな情報収集と分析が必要であり、そこから課題を見いだすプロセス(アセスメント)が重要です。アセスメントをよいものにするには、おむつや排泄の基本的な学びを踏まえ、「その人にとってよりよい排泄とは何か」と考え続けなければなりません。その意味で、医師、看護師、介護福祉士のみならず、理学療法士、薬剤師、福祉用具専門相談員が連携し、それぞれが多職種の知識の一端を共有していることが必要です。 また、おむつは消耗品でもあるため、「安価で漏れなければよいもの」とされがちです。しかし、そのおむつが褥瘡のリスクを高めたり、寝返りを阻害したり、端座位を取りにくくもしています。「適切なおむつにしたことで、端座位が可能になり、食事をとりやすくなった」「車いすでの座位姿勢のくずれは、おむつが原因だった」といったことは本当によくあることです。食事や車いすはどちらも、患者さんの身体にかかわる重要なことです。おむつ交換などはともすると介護にかかわることで、看護の領域ではないとも思われてきました。しかし、不適切なおむつの使い方が患者さんの回復を妨げていることがあるのです。 そうだとすれば、看護にもおむつや介護の視点が必須であることに気付きます。看護の専門知識のみならず、福祉用具や介助も同様に専門知識が必要になります。ⅱ

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