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浜田きよ子 「排泄ケアについて語るのは簡単ではない」というのは、まさにこのことからです。 私たちはむつき庵で排泄ケアに必要な学びや考え方を習得していただくために、「おむつフィッター」研修を開催してきました。「ケアとは生身の主体に向かうものである」ということが前提になっていますが、主体が変わればケアのありさまは当然のことながら変わります。これこそが「マニュアル化しにくい」という理由です。しかし、基本的な学びは必要ですから、「おむつフィッター」研修では必要な知識や「排泄ケアとは何か」という総論や考え方を習得することを目指してきました。 この研修はさまざまな職種の方々が受講しているため、自分自身の専門領域以外の学びをグループワークなどから得られます。その結果として、おむつや排泄にかかわるケアの考え方を大きく広げられます。むつき庵は開設16年を過ぎ、現在では「おむつフィッター」3級研修の修了生は8,200人を超えました。最近は、看護師の方々が受講生の半数近くになり、研修での学びをもとに病棟や在宅で過ごす人たちの排泄ケアに取り組んでいます。  本書のもとになったのは、メディカ出版のオンラインマガジン配信プラットフォーム「メディマガ」の連載です。「おむつフィッター」1級研修の修了者やむつき庵の皮膚・排泄ケア認定看護師をはじめとする認定看護師の方々から排泄ケアの事例を紹介していただき、おむつケアと排泄ケアのあり方を読み解くというものでした。本書はその1年間の連載内容に、医師の執筆による医学的知識の紹介と「おむつフィッター」1級研修の修了論文の一部を加えたものです。 「患者さんのおむつケアと排泄ケアにどう向き合うのか」というテーマをさまざまな事例や視点から考え抜くことができたため、大変刺激的なものとなり、多くの学びがありました。そのまま終わらせるのは残念だと思っていたところ、このような書籍になったことでより多くの方々に読んでいただけることをうれしく感じています。 編集にご協力いただいた吉川羊子先生はじめ、原稿を寄せてくださった筆者の方々、本当にありがとうございました。本書がこのような読みごたえのある内容になったのは、その構成を考え、とても大変な編集作業を担当してくださった渥美史生さんのおかげです。ご助言も適切で、本ができるまでの時間は、思えば自身の排泄ケアをさらに深める機会でもありました。本当にありがとうございました。2020年4月ⅲ

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