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第 章1「おむつフィッター」が伝えたいおむつケアと排泄ケア3◉排尿自立におむつケアと排泄ケアでどうかかわる?退院後の生活スタイルに合わせて多様化する病院現在、私は訪問看護師として医療・介護のケアにかかわっています。看護を行う対象は、病院での治療を終え、在宅での生活を希望されている人です。訪問看護による介入を行うにあたって担当者会議に出たときに感じることは、核家族化が進むなかで老老介護や独居でのシングル介護といったケースが確実に増加しているということです。また、診療報酬改定に伴い、在院日数も「疾患別」に上限が決められ、要介護度にもよりますが「とりあえず自宅へ」という人もいますし、患者・家族の希望で在宅へ戻る人もいます。病院では、主疾患の「治療」をメインとして、内服薬のコントロール、リハビリテーションによる機能回復、また緩和ケアなどが行われます。最近では、病院自体の機能も変化し、急性期病院や慢性期病院などと選別され、さらに退院後の生活スタイルに合わせて回復期リハビリテーション病棟、地域包括病棟なども誕生しています。見過ごされがちな「その人の暮らしたい生活」を見直す回復期病棟は、生命の危機を脱しても医学的・心理的サポートがまだ必要となる時期の患者さんを対象に受け入れています。そのため、多くの医療チームを組んで集中的なリハビリテーションを実施し、患者さんに心身が回復した状態で在宅に戻ってもらうことを目的としています。退院日が決まり次第、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、ケアマネジャーなどがサービス担当者会議やケアカンファレンスを開き、患者・家族も含めて、それまでの経過や今後の治療方針について報告・連絡などを行い、情報を共有します。担当者会議やケアカンファレンスに参加していて、「その人の暮らしたい生活が退院時の計画に盛り込まれていない」と感じることがあります。人はそれぞれ独自に時間を過ごしているため、ケアを提供する側が想定したとおりの時間を在宅に戻ってからも過ごすわけではありません。病状が思うように回復せず、本人・家族が在宅での看取りを希望する人も多くなっているように思います。ケアの中心にあるのは患者・家族の希望患者さんの希望、つまり「これからどのように生きたいか」「1日をどのように過ごしたいか」「入院前はどのようなことを大切にして生活をしてきたか」といったことを把握しきれていない現状があるのではないでしょうか。在宅で患者さんにケアを行うためには、病状を治すだけではなく、本人が希望する支えについても入院中から考慮することがとても大切だと考えています。そのため、介護者の能力、住宅環境、経済状況、服薬管理、人間関係など暮らし全体をみる必要があります。ケアの中心にあるのは、患者さん本人と家族です。医療機関では疾患に対する治療など「生命」にかかわる処置やケアが優先されますが、在宅で求められるのは患者さんが自分の生きてきた歴史とともに生活を継続することです。さらに訪問看護師の視点からみた在宅医療と排泄ケアの現在

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