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10リハビリナース別冊 脊髄損傷者においては、健常者よりも心血管疾患の有病率が高く、主要な死因の一つとして報告されています6~8)。心血管疾患の有病率が高い大きな理由は、健常者に比べて脂質異常症や糖尿病、内臓脂肪の蓄積のような心血管疾患のリスクを有する率が高いからです9~12)。それらには、麻痺による不活動のほか、交感神経活動の低下や筋肉量の減少による基礎代謝の低下などもかかわっています13、14)。さらに“筋肉量の減少”については、近年、「運動中に活動している骨格筋の筋細胞からはインターロイキン6などのサイトカインが産生、分泌され、それらは脂肪の分解やインスリン抵抗性をブロックする」ことが証明され15、16)、こちらのメカニズムも関与している可能性があります15、17)。Koudaら14)は、「頸髄損傷者と健常者において、ハンドエルゴメータを用いた運動(最大酸素摂取量の60%の運動強度で20分間)をすると、健常者は運動後に血中のインターロイキン6が増加したのに対して、筋肉量の少ない頸髄損傷者では運動後も増加しなかった」という非常に興味深い報告をしています。脊髄損傷者における生活習慣病については、社会復帰後の食生活や運動習慣が大いに関与するので、入院中に予防の大切さを話しておく必要があります。脊髄損傷のリハビリ医療の課題と魅力 現在の医療制度では、リハビリ医療に長期間を要する疾病や障害をもつ人は、複数の医療機関が連携して社会復帰を目指すことになります。脊髄損傷者も例外ではありません。とくに中高齢の脊髄損傷者は、身体の予備能の低下や併存する内科疾患により長期間のリハビリ医療を要するケースも多く18)、連携の必要性は高まる傾向にあります。そして、そこにかかわる医療機関には、「いかなる時期を担当しようとも、目の前にいる脊髄損傷者がもつ可能性を見失うことなく責任をもって役割を果たし、次のステップにバトンタッチすること」が求められています。 一人の脊髄損傷者が社会復帰するまでに複数の医療機関が携わるということは、より多くの方にその魅力を感じ取っていただくチャンスであり、それは、すなわち「脊髄損傷のリハビリ医療の普及・発展」を意味します。すでにその魅力にお気付きの方も多いと思いますが、ここにその一部を挙げておきます。①脊髄損傷者も高齢化の傾向があるとはいえ、リハビリの対象となるほかの疾病に比べ若

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