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リハビリナース別冊111基礎知識1脊髄損傷者のリハビリテーション年者が多く、社会復帰の形態が多岐にわたります。そこには多大なエネルギーを要しますが、成果とともに大きな喜びや達成感が得られ、皆で共有することができます。②脊髄損傷者が障害者スポーツなどへ社会参加することは、皆に夢を与えます。また、そこでの成長や活躍から、医療従事者は自己の存在価値を強く感じることができます。③感覚障害により痛みなどの典型的な症状がない状況での診療は、視診・触診の重要性を再認識することができ、基本に立ち返る医療ともいえます。リハビリ医療のための診断と評価全身理学的所見と神経学的所見(機能障害の評価)1)全身理学的所見 脊髄損傷では知覚障害などによって自覚症状に乏しいので、いずれの時期も全身理学的所見を正確にとることがきわめて重要です。そのことで合併症(皮膚や膀胱、直腸、呼吸器、循環器など)の存在も把握できます。2)神経学的所見 神経学的所見は、まずは知能など脳の機能を評価しておきます。わが国に多い頸髄損傷では、中高齢での受傷と頭部外傷の合併の頻度が高いためです。また同様の理由で嚥下障害の評価も欠かせません。脊髄損傷者の死因の第1位は呼吸器にかかわるものであり19)、嚥下障害と呼吸機能障害の存在下で生じる誤嚥性肺炎はとくに注意が必要です。 損傷レベル(脊髄の損傷の高さ)と麻痺の程度(完全麻痺、不全麻痺など)の診断は、脊髄損傷の神経学的および機能的国際評価法(Americanspinalinjuryassociation:ASIA)に基づいて、運動障害と知覚障害を診察して行います。ただし、頸髄損傷についてはASIAによる評価だけでは詳細な予後予測は困難なため、Zancolli上肢機能分類も用います。詳細は1章-2「麻痺の分類と評価」に譲りますが、これらは脊髄損傷の医療における共通の言語として理解しておきましょう。ADL(活動の制限の評価) 機能障害によって生じるADLの評価には、Functionalindependencemeasure(以下、FIM)やBarthelIndexを用いるのが一般的です。前述のごとく、わが国では中高齢で受傷する頸髄損傷者が多いので、認知に関する項目を含むFIMでの評価は欠かせません。12
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