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 脊髄損傷者の多くが、受傷後に搬送された医療機関でリハビリテーション(以下、リハビリ)医療を完結していた時代もありましたが、現在の医療制度においては、複数の医療機関が1つのチームとなって個々の脊髄損傷者にふさわしいゴールを達成しなければなりません。そのためには、これまでは脊髄損傷のリハビリ医療にかかわりが少なかった医療機関の力も必要になってきます。 急性期医療から次のステップとして選択されることが多いのが、回復期リハビリテーション病棟です。脊髄損傷についていえば、本格的なADL訓練や合併症の管理のためのトレーニングを開始し、「社会もしくは脊髄損傷のリハビリ専門病院」に送り出すまでの非常に重要なポジションを担うことになります。脊髄損傷者にとって、回復期リハビリ病棟でのリハビリ医療の良否が社会復帰後の長い人生を左右するといっても過言ではありません。当然、そこには役割を果たすための十分な知識と意識が求められます。 このたび、回復期から維持期のリハビリ医療に携わっている看護師の方々をおもな対象として、その習得を目的とした書籍を上梓しました。社会復帰を見据えた合併症の管理や日常生活へのかかわりなどについて、EBM (evidence-based medicine)を意識しながら、吉備高原医療リハビリテーションセンターの看護のノウハウをお伝えしたいと思います。 脊髄損傷者の社会復帰とその後の生活での感動を皆で共有し、われわれの共通の成功体験としていくことが、いま、脊髄損傷のリハビリ医療の目指すところです。本書が、脊髄損傷のリハビリ医療に携わる多くの医療従事者に活用され、脊髄損傷者の社会復帰に資すれば幸いです。2017年2月吉備高原医療リハビリテーションセンター副院長古澤 一成はじめに

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