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10第1章これだけは知っておきたいリウマチ最新知識疾患概念・疫学兵庫医科大学内科学リウマチ・膠原病科教授松井 聖 まつい・きよし1関節リウマチの概念1.関節リウマチの歴史1、2)2400年前にヒポクラテスは関節疾患について述べており、リウマチ性疾患は「カタル(Catarrhos)」という用語で紹介されています。「カタル」は「流れる物質」を意味しており、西暦100年頃には使われていた「ロイマ(rheuma)」という言葉と同義と考えられています。当時、リウマチ性の体液は頭部で産生され、頭から下のほうへ流れることによって、それが多くの病気の原因になり、うっ滞すると腫脹や発赤をきたすと解釈されていました。これらのことから、古代にはすでにリウマチ性疾患・関節炎が報告されていたことがわかります。痛風、関節リウマチ(rheumatoid arthri-tis:RA)、リウマチ熱、変形性関節症(os-teoarthritis:OA)の区別が明らかになり始めるのは1800年代に入ってからのことです。関節リウマチが滑膜炎から始まり、関節だけにとどまらず滑液包や腱鞘もおかされ、二次的に関節軟骨を破壊していくことが実証されました。さらに、リウマチ結節が関節以外の症状として報告されました。臨床的区分として痛風、リウマチ熱、関節リウマチ、OAが報告されました。「rheumatoid arthritis」という名称が提案されたのもこの年代でした。1895年にX線が発見され、すぐに診断に用いられるようになって関節リウマチとOAが区別できるようになりました。また、リウマトイド因子(rheumatoid factor:RF)は、1912年に発見されて以来、精力的に研究され、RF陽性反応は予後不良を予測する際に有用であることが証明されました。また、関節リウマチの合併症として、アミロイドーシスをはじめ、脾腫、白血球減少を合併する症候群、じん肺症を伴う症候群が報告され、全身性疾患であることが明らかになりました。2.関節の構造と関節炎の進展(図13))正常関節は、骨と骨が連結する部位が関節包に包まれており、骨と骨の間には関節腔が存在しています。また、骨の端に軟骨があり、その先に一層の滑膜が存在しています。関節リウマチによる関節炎は、まず、滑膜組織の炎症性増殖と滑液包の骨の付着部と軟骨・滑膜の移行部に挟まれた領域から始まります。炎症のため滑膜増殖を起こし、肥厚していきます。これをパンヌス形成といい、滑膜腫脹が起こり、次いで、絨毛増殖が起こります。その結果、炎症が増強し、やがて関節滑液貯留が起こります。
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