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三浦靖史 みうら・やすし神戸大学大学院保健学研究科リハビリテーション科学領域准教授 「私には夢がある」と米国のキング牧師が有名な演説をした1964年には、関節リウマチの治療薬はステロイドとアスピリンしかありませんでした。 2003年に日本で最初の生物学的製剤が使用できるようになって、関節リウマチは不治の難病から、薬で治療可能な普通の病気へと大きく変化しました。とくに、発症早期に積極的な薬物療法を導入することによって、発症前と変わりない生活を過ごせるようになったことは、多くの患者さんに福音をもたらしています。一方で、すでに体に障害が出現してしまっている患者さんに対する治療やケアが必要なことは変わっていません。 また、薬物療法の進歩にともない、重篤な副作用や高額な薬剤費など新たな問題への対策が求められています。これらに、医師だけで対応することは困難であることから、チーム医療によるトータルマネジメントが重視されるようになりました。 しかし、看護師をはじめとするメディカルスタッフが関節リウマチについて学びたいと思った際に、優れたリウマチ学のテキストは数多く存在しますが、メディカルスタッフが直面する課題について自らの視点でわかりやすく書かれたものがこれまでほとんどありませんでした。 今回、神崎初美先生から本書の企画をいただき、全国の医師、メディカルスタッフに執筆を依頼して、「多職種の、多職種による、多職種のためのリウマチテキスト」である本書の編集を務めさせていただいたことを光栄に思います。どの職種が読んでもわかりやすいものとなることを意識して編集しましたので、本書が、日々、関節リウマチ患者さんのキュアとケアに取り組むすべての職種の皆さまの一助になれば幸いです。 ところで、私にも夢があります。関節リウマチの病因を解明して治癒できるようにすることです。1989年に私が研修医になったころには、治療薬はステロイドと注射金剤しかありませんでした。今日の生物学的製剤や低分子量分子標的薬をみれば、決して夢物語ではなく、実現可能な夢だと思います。治癒ができるその日まで、そして治癒ができてもケアが必要な関節リウマチ患者さんがいる限り、皆さまと力を合わせてがんばっていきたいと思います。 最後に、本書の企画を実現してくださったメディカ出版編集局の皆さま、共同編者の神崎初美先生、執筆を分担くださった先生方、そして関節リウマチの治療とケアの進歩について身をもって体感され、日ごろ、感想をお寄せいただいている関節リウマチ患者さんとご家族の皆さまに、心から感謝を申し上げます。2017年3月編者のことば
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