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83▲用語解説大腿骨頚部骨折特徴・症状は?● 脚の付け根(股関節)の骨折の1つ。● 骨粗鬆症を背景とする脆弱性骨折の1つ。● 高齢女性に好発(患者層は転子部骨折よりもすこし若い)。● 股関節痛や起立不能がみられる。高齢女性が転倒後に股関節が痛くて立てない⇒ ほとんどが股関節の骨折!● 股関節部の骨折には、大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折(→p.89)の2つがある。● 大腿骨頚部骨折は骨癒合させるのがむずかしく、初めから人工骨頭置換術を行うことも多い。大腿骨頚部骨折は、転子部骨折に比べて骨がつきにくい!エキスパート のつぶやきなぜ、頚部骨折は骨癒合しにくい?●関節は関節包という袋で覆われている。●大腿骨頚部骨折は、骨折線が関節の中(=関節包の内側)にある。●関節包の外には骨膜があるが、内側にはない。●骨膜は骨芽細胞などの骨を作る細胞でできた膜であり、骨膜がないと折れた骨はくっつきにくい。●だから、関節の中で折れると骨はくっつきにくい⇒大腿骨頚部骨折は骨癒合しにくい! 骨粗鬆症:→p.370脆弱性骨折:骨粗鬆症が背景にあり“立った位置からの転倒”くらいの弱い外力で生じる骨折の総称。転位が小さい頚部骨折転位が大きい頚部骨折症例2章 骨 折2094章 肩関節● 日常生活動作(頭を洗う、体を洗う、物を干すなどの動作)で必要とする肩の運動は屈曲動作で、肩が拘縮して動きが悪いと日常生活に支障をきたす。● おおむね90°の屈曲動作が可能になると日常生活が行いやすくなるので、肩関節疾患の手術後の患者も含め、屈曲90°を得ることが目安となる。頭を洗う頭を下げる通常は140°程度の屈曲動作が必要だが、頭を下げることで、洗髪動作は90°の屈曲動作で可能となる。物を干すつま先立ち片手を使う通常は140°程度の屈曲動作が必要だが、つま先立ちや片手を使うことで90°程度の屈曲動作で可能となる。日常生活動作の指導862章 骨 折研修医レベル!! ココまで知ってたら、Gガーデンarden sステージtage 分類非転位型骨折Stage ⅠWeitbrecht支帯Stage ⅡStage Ⅲ転位型骨折Stage Ⅳ 大腿骨頚部骨折の分類としてはGarden stage分類がもっともよく用いられてきた。Gardenの原著論文によると、各stageは以下のように記載されている。StageⅠ: 外反嵌入型で頚部内側皮質が若木骨折を呈する不完全骨折StageⅡ: 完全骨折で骨折部に角度変形がないものStageⅢ: posterior retinacular attachmentが破綻していないために骨頭が外転(骨折部は内反)、回旋したものStageⅣ: retinacular hingeが破綻したために骨頭はnormal positionに近くなり、臼蓋と骨頭の圧迫骨梁の配列が一致して見えるもの Stage ⅢとⅣの違いの本質は、大腿骨頭の栄養血管を含んだWeitbrecht支帯の破綻の有無といわれているが、X線画像では当然Weitbrecht支帯そのものは見えない。 Garden分類の観察者内および観察者間差異がともに大きいことを理由として、1988年のActa OrthopaedicaScandinavica誌の巻頭言で、「Garden stage ⅠとⅡを非転位型骨折、stageⅢとⅣを転位型骨折と定義したうえで論文を募集する」と呼びかけられた。 問題がないわけではないが、治療方針の決定のために非転位型骨折と転位型骨折に分ける2群分類法が、現実的には国際的なスタンダードになっている。非転位型と転位型の2群分類が主流Garden,RS.Low-angle fixation in fractures of the femoral neck.J.Bone Joint Surg.43-B,1961,647-63.85大腿骨頚部骨折予後と合併症は?歩行能力・移動能力の低下が大問題!● 手術しても、ケガをする前と同じくらい歩けるようになる患者は半分くらい。● 最終的な歩行能力(機能予後)に影響するのは、受傷前の歩行能力、認知症、年齢の3つ。寝たきり→ 全身合併症!● 脆弱性骨折を起こす高齢者は、もとから体が弱っている人も多く、骨折を契機に寝たきりになってしまうこともある。● 寝たきりになると、肺炎、尿路感染、褥瘡などの合併症が問題となる。入院中の死亡原因No.1は誤嚥性肺炎骨折の合併症● 偽関節・骨癒合不全(→p.116):折れた骨がいつまでもくっつかない。骨がいつまでもつかないと、スクリューが骨から飛び出してくる(カットアウトやゆるみ)。● 大腿骨頭壊死症(→p.289):骨頭への血行不良で骨が死んでしまう。荷重がかからない部分の壊死なら問題がないことも多い。● 遅発性骨頭壊死陥没:骨頭壊死の範囲が荷重部分を含む広範囲になると、やがて骨頭が潰れてくる。そうなると、非常に痛くて歩けなくなる!● 人工骨頭の脱臼:後方アプローチで手術した場合、股関節を屈曲・内転・内旋すると骨頭が外れてしまう。人工股関節全置換術(THA)に比べれば、人工骨頭の脱臼はかなりまれである。エキスパート のつぶやき骨接合術か、人工骨頭置換術か 骨をくっつける手術(骨接合術)をした場合、骨がつかなかったり(=偽関節・骨癒合不全)、骨が壊死(=大腿骨頭壊死)を起こして潰れて(骨頭壊死陥没)きたりするリスクがある。このような合併症は、転位(ズレ)が大きい場合にとくに生じやすい。これらの合併症が生じたときには、後から人工骨頭置換術や人工股関節全置換術、あるいは骨頭切除術をやり直す必要がある。高齢者に2回の手術はやりたくない。そのため、転位の大きな骨折では、初めから人工骨頭置換術を選択する。ゆるみ(ルースニング)骨癒合不全・偽関節遅発性骨頭壊死陥没カットアウト2章 骨 折大腿骨頚部骨折歩行能力・移動能力の低下が大問題!大腿骨頚部骨折842章 骨 折▲用語解説治療は?● 大腿骨頚部骨折は関節内の骨折なので、骨癒合しにくく骨折に関連する合併症が多い。●保存治療では骨はくっつかないので、手術を行うのが一般的。●転位が大きい場合⇒人工骨頭置換術を選択する。●転位が小さい場合⇒骨接合術(ピンやスクリューによる固定)を選択する。● 人工骨頭置換術なら、骨癒合不全や骨頭壊死の心配はない。しかし、侵襲(出血量、手術時間など)が骨接合術に比べてやや大きいのが難点。中空スクリュー:中に穴の開いたスクリュー。まず、ガイドワイヤーを刺入して、スクリューの穴にワイヤーを通してスクリューを入れる。転位が大きい場合の手術転位が小さい場合の手術人工骨頭置換術骨接合術ハンソンピンスクリュー(Cannulated Cancellous Screw:CCS)Sliding Hip Screw(SHS)とその亜型● 人工材料で大腿骨頭と頚部を置換してしまう● ピンを2本入れる● ピンの先端からフックを出して回らないようにする● 中空性のスクリューを3本入れる● 細い中空スクリューを2~3本、あるいは太いスクリューを1本入れる● 最大の特徴はプレートと連結してスクリューが固定されること理解を深める!関節内の骨折なので、骨癒合しにくく骨折に関連する合併症が多い。関節内の骨折なので、イラスト・図と赤字を眺めるだけでも重要ポイントが身につく! の内容をより詳しく理解するための知識を解説、後輩指導にも使える➡283むずかしい言葉は欄外でやさしく解説知って得する一歩進んだ知識もたくさんまとめました!ケアを行う際に役立つポイントは1枚にまとめています!医師の頭の中を覗くことができるコラム付き!3v

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