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1褥瘡ケアの基本1 褥瘡発生のメカニズムいます。外力により細胞自体が変形すると、このプログラムされた細胞死の割合が増加したり、細胞と細胞の間を充填する細胞外マトリックスの配列が変化したりすることで、細胞の障害が誘発されます。 圧力によって生じた組織の阻血性障害だけでなく、複合的な要因により褥瘡は形成されます。褥瘡の発生要因 同じ外力が生じても、褥瘡が発生する人と発生しない人がいます。どのような違いがあるのでしょうか。褥瘡発生の要因は局所的要因、全身的要因、社会的要因に分類されます(表1-1)。局所要因だけでも褥瘡は発生しますが、以下の3つの要因が重なることで褥瘡発生リスクが高まります。局所的要因 直接的な要因は外力ですが、外力に対する組織の耐久性(抵抗力)が褥瘡発生に影響します。浸軟している皮膚は表皮の角質細胞が膨潤し、結合が弱くなるため摩擦係数が上昇して、わずかな外力で組織損傷が生じやすくなります。同様に、皮膚の乾燥や菲薄、浮腫、黄疸などで皮膚は脆弱化し、組織耐久性が低下します。全身的要因 皮膚の脆弱化や骨突出、可動性・活動性の低下などを引き起こす基礎疾患や全身状態、治療などが挙げられます。社会的要因 特に在宅では介護力が不足しやすい状況にあります。介護力が不足すると食事摂取量が減少したり、寝たきりになったりして褥瘡の発生リスクが高まります。また、経済的な負担など患者や家族を取り巻く環境にも着目します。局所的要因・圧力、摩擦力、ずれ力、湿潤・皮膚の脆弱性:浸軟、乾燥、菲薄、浮腫、黄疸全身的要因・ 基礎疾患:糖尿病、虚血性心疾患、悪性腫瘍、肝・腎機能障害、脊髄損傷、終末期・全身状態:やせ(骨突出)、低栄養、貧血、免疫不全、循環動態、四肢麻痺・加齢:日常活動性の低下、皮膚の変化(バリア機能低下、菲薄)・治療:抗がん剤、ステロイド剤、放射線、透析・皮膚疾患社会的要因・高齢化(本人、介護者)・介護力の不足・経済的資源の不足・福祉制度、サービスなどに関する情報不足表1-1 褥瘡発生の要因引用・参考文献 1) 日本褥瘡学会編.“褥瘡発生のメカニズム”.褥瘡予防・管理ガイドライン.東京,照林社,2009,18-9. 2) 真田弘美,宮地良樹編.“褥瘡とは”,“褥瘡はなぜできる”.NEW褥瘡のすべてがわかる.大阪,永井書店,2012,13-31.(清藤友里絵)13

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