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1頭頸部がんの看護第1章 総論 頭頸部がんの治療・看護132疫学的特徴頭頸部がんの疫学的特徴として、飲酒・喫煙・口腔不衛生といった生活習慣が発生に大きく影響するといわれています2)。このような背景から、女性より男性に多い傾向があり、とくに喉頭がん、咽頭がん、口腔がんについては男性の罹患率が高く、男女比は10:1とされています。そのほか、ウイルス感染との関連があるものは、EBウイルス(エプスタイン・バールウイルス)感染による上咽頭がん、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染による中咽頭がんがあります。3頭頸部がんの治療によるQOLへの影響頭頸部領域は、咀嚼、嚥下、構音、発声、気道など生命を維持するための重要な役割を担っています。加えて外見的にも隠すことが難しい部位です。頭頸部がんの治療は、この領域に機能障害や外見の変化など身体的な影響を及ぼします。そして、これらの影響により患者は社会から引きこもり、精神的にも不安定な状態になり3)、うつ病や不安を引き起こしやすいといわれています4)。このように心理的にも大きな影響を受けることにより、自尊感情の低下や集中力の低下などをきたし、日常生活や社会生活が制限され、QOLの低下を招きます。具体的には、手術によって変化した自分の姿を受け入れられずセルフケアのできない状態が続いたり外出できなくなったりする、機能障害のために生活に支障が出るなどです。これらの要因から頭頸部がん患者の自殺率の高さが報告されています5)。さらに、手術を受けた患者よりも放射線治療を受けた患者のほうが、自殺率が高いことも報告されています6)。頭頸部がん患者は、がん治療を終えても治療によって生じたさまざまな障害によってQOLの低下につながる可能性があります。4機能障害や外見の変化を最小限にとどめる治療頭頸部がんの治療においては、これまでQOLの観点からさまざまな治療法が検討されてきました。1960年代に再建術を含めた手術療法が確立されて以降、1980年代には遊離組織移植の導入などにより治療成績が向上し、機能障害や外見の変化を最小限にとどめる治療法が開発されています。なかでも、放射線治療の技術の進歩に伴い、適切に症例を選べば治療効果が得られるとして化学放射線療法〔化学療法(薬物療法)と放射線治療を組み合わせた治療〕が手術に劣らない標準治療となりました。頭頸部がん看護の役割1診断期・治療期 頭頸部がんの看護では、直接的に生命に影響を及ぼす頭頸部領域の臓器、部位の特徴、

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