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 「頭頸部がん」は一般的に言ってマイナーな分野であるものの、そこに携わった者たちは、頭頸部がん治療というものがきわめて奥深く、興趣の尽きない分野であることを知っています。ありきたりな表現で言えば、「やりがいがある」のですが、実際の内容は平凡ではありません。その解剖学的構造は緻密でありながら、規模や侵襲の大きな手術・治療を伴うこともあり、越えるべきハードルは高いのです。また、患者の社会的背景、外観の変化、失声、嚥下摂食障害などにまつわる多くの課題があります。 「5東病棟」というのは、愛知県がんセンターの頭頸部外科病棟ですが、その病棟師長を務めていた青山寿昭氏とは、良い病棟を築き上げていくにはどうしたらよいかという話を何度となくしました(そしてこの話はまだ終わっていません)。そして、頭頸部がんの看護に関する情報のニーズが高いことを耳にしました。実際、頭頸部がんについての書籍は多く存在しますが、こと看護に特化した書籍はごく限られています。頭頸部がん分野の発展に伴い、そのニーズが高まることは必然であると思われます。 本書は、頭頸部がんの診断・治療・看護をわかりやすく解説するというものです。青山氏の趣旨に賛同した当院の頭頸部がん診療に関わる医師が、診断・治療についての執筆を担当し、協力しました。近年の頭頸部がん治療の発展には目を見張るものがあります。咽喉頭病変に対する経口的手術が多く行われ、高精度放射線治療も一般的なものとなっています。薬物療法においては、分子標的薬に続いて免疫チェックポイント阻害薬が登場し、とくにこの領域の標準治療は飛躍的に更新されつつあります。目まぐるしく変わる標準治療の解説をすべて行うことは不可能ですが、ある程度最新の情報を加えながら、頭頸部がんの看護を専門とする者が認識しておくべき基本的な知識を習得できるように、わかりやすい解説に努めています。 慌ただしい日常診療、時間外労働の削減、また働き方改革が叫ばれるなかで、5東病棟でも、病棟看護師に対する講義の機会を設けることは実際なかなか難しい現状があります。各執筆者は、これが看護師向けの書籍であることを念頭に置き、もし時間が許せばこのぐらいは講義しておきたい、という視点でまとめたものです。本書を手に取った皆さまには、ぜひ講義を受けるつもりで読んでいただけると幸いです。そして、疑問が生じた際には医師に尋ねたり、医師向けの書籍にも目を通したりしていただきたいと思います。さらには、相互コミュニティの中で議論を交わし、頭頸部がん看護の輪を広げ、発展させていただければ、本書の目的は十分達せられたことになるはずです。 2021年1月花井信広はじめに

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