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はじめに♪ 時が来た 逃すな 振り返ることは もはやない この日を 忘れないぞ この時に すべてかけ 素晴らしい時へ♫ 救急外来診療で難しいのはどのような点でしょうか? 症状がそろう前に来院するがゆえに疾患が想起できない、頭には浮かんではいるけれどもその時点では診断が難しい、複数の患者さんを同時に診る必要がある、ベッドに限りがあり経過観察目的の入院が難しい、専門科がない、検査に限りがあるなど、挙げだしたらきりがありません。 救急外来では、“いまなにをするべきか”を迅速に判断する必要があり、確定診断する努力はするものの、時間というものをみかたにつけない限りは確定することはできないことも多いので、診察時の状態での重症度や緊急度を見積もりマネジメントすることが必要です。患者さんが発する“危険なサイン”を逃さずキャッチすることはもちろん、引き出すことも大切です。 「え? あの患者さん、そんなに重症だったの!」「え? あの症状であの疾患!」など、あとあと“まさか”と思った経験があるかと思います。救急外来診療に長らく従事しているとよくあることでも、経験がなければ頭に浮かばず判断を誤ってしまうことはよくあることです。本書では、頭に入れておいていただきたいことを、病歴(History)、身体所見(Physical)、バイタルサイン(Vital signs)の3つに分けて解説しています。ねっころがりながらパラパラと読み、Hi-Phy-Vi(ハイ・ファイ・バイ)の見どころをチェックしてみてください。各項末のPoint:俳句調コメントから読むのもありです。 冒頭の唄は、私が最も好きなミュージカル“ジキルとハイド”「時が来た This Is The Moment」の一節です(作詞:Leslie Bricusse、日本語詞:高平哲郎)。ジキル博士が善と悪を分離する薬を研究開発し、それを自分で試す際に唄うビッグナンバーです。時を逃さず、適切にマネジメントしたいものです。ジキル博士と違って、救急外来では振り返ることも大切ですけどね。 さいごに、家族との大切な時間を逃さぬよう約束して。2020年2月総合病院国保旭中央病院 救急救命科 医長/臨床研修副センター長 坂本 壮

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