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講義を始める前に 麻酔科で使う薬を、看護師さんに理解してもらうために、数年前からメディカ出版の「周術期薬セミナー」で話をしている。このセミナーの特徴は、一言でいうと「雑談」である。雑談の中に、周術期薬が登場する。 麻酔科医の使う薬は、むずかしい。セミナーは、そんな声から始まった。なぜ、むずかしいのか? それは、薬の作用や名前を理解せずに丸暗記するからである。また、ただ単なる薬品名と使用量、作用、副作用、禁忌だけをまとめた薬品集を使っているからである。いわゆる薬品本は、よくわかった人が、確認のために引く・調べるためにある。看護師向けといわれる薬品本は、医師向けのものを平易な言葉で言い換え、観察ポイントを付け加えたものが多い。しかし本当に知りたいことは、どういった状況で、どんなふうに使うのかという実践での使われ方、ざっくりとした作用のしくみなどではないか。周術期医療の背景を理解せずに薬の話はできないのである。 周術期薬セミナーは、どんな状況でどのように使うのかという話やトリビアを織り交ぜながら、麻酔科医の薬を理解してもらう機会となっている。セミナーは、そのまま文章にはならないと思っていたが、今回、粋な計らいで、ライブ講義がそのまま本として出版できることになった。 でき上がってみると、自分が読んでも楽しい、おもしろい、わかりやすい、すーっと頭に入ってくる。本書は2014年秋の大阪でのセミナーをもとに最新の情報を加筆したものである。看護師さんだけでなく、薬剤師・臨床工学技士・研修医の皆さんをはじめ周術期にかかわる方々全般にも、周術期薬の理解に大いに役立つ内容となっている。興味を持たれたならば、ライブ(生)で受講していただければ幸いである。 2016年2月広島大学病院 麻酔科
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