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阿古 潤哉北里大学医学部 循環器内科学 教授 近年、X線透視やCTなどを見ながら行う侵襲的治療(interventional radiology:IVR)は、大きな発展を遂げてきました。中でも、血管を通してカテーテルを用いて行う低侵襲治療法の進歩にはめざましいものがあります。 例えば、冠動脈のカテーテル治療は既に冠動脈疾患治療の中心的位置を占めています。また、脳梗塞や脳動脈瘤に対する治療の進歩により、頭蓋内でのIVR手技も大きく増加傾向にあります。もちろん、腹部動脈からの塞栓療法あるいは抗がん剤使用など、IVRの守備範囲はこれまで以上に重要になってきています。また、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)や経皮的僧帽弁接合不全修復術(MitraClip®)に代表されるような構造的心疾患(structural heart disease:SHD)治療のデバイスも近年多く出てきていますが、そのアクセスに用いられるのも動脈や静脈です。 さて、このようなIVRの際に欠かせないのが血管の解剖学的知識です。人体の構造は三次元ですので、IVRで本当に必要な情報は、通常の解剖学の知識や勉強だけでは不十分です。そのため、IVRでは正面からだけではなく、いろいろな方向からの透視画像を検証することも必要となります。また、いくつかの枝が重なった状態で造影されるため、目の前の造影画像と解剖のイメージが結びつきにくいと考える方もおられるでしょう。より良いIVR治療を行うためには、IVRに特化した解剖の情報が求められているのです。 本書は、「造影画像と解剖のイメージが結びつきにくい」などの悩みを抱えている血管内治療にかかわる看護師をはじめとするメディカルスタッフや、血管の造影にかかわるすべての方々のために企画しました。現場で実際にカテーテルを施行している医師が、現場で必要とされる知識について執筆しました。また、血管の走行をイラストで示すのみならず、実際の画像も提示することにより、理解を深めることができるような構成を試みました。中には、疾患症例の写真やイラストも入れてありますので、実際にIVRにかかわるときにすぐにでも活用できると考えています。 ぜひ、実際の手技の際にも本書を参考にして、検査や治療の流れを理解していただければと思います。看護師、放射線技師、MEをはじめとするメディカルスタッフの皆さま、そしてIVRにかかわるすべての方々のお役に立つことを願ってやみません。2019年8月20日はじめに

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