1章1麻酔関連薬1吸入麻酔薬セボフレン®(セボフルラン)どんな薬? セボフルランは主に鎮静薬として、全身麻酔の導入と維持に使用される揮発性吸入麻酔薬である。気化器を用いて麻酔ガスとして吸収させることで肺胞、血液を通して中枢神経に作用する。気道刺激性は少なく、小児の緩徐導入によく使われる。適応に関して議論が分かれるが、喘息発作に対しての有効性も報告されている。中脳網様体や大脳皮質などに対する抑制作用が考えられているが、全身麻酔の作用機序は未だ解明されていない。 効果の速さと強さを示す指標として、①血液/ガス分配係数と、②最小肺胞濃度(minimum alveolar concentration;MAC)がある。①血液/ガス分配係数:吸収された麻酔ガスは肺胞、血液、神経系や脂肪、筋肉などの組織に取り込まれる。これらの組織が飽和し定常状態になる速度が速いほど、導入や覚醒が早く、調節性がよい。血液/ガス分配係数はこの調節性を示し、小さいほど血液への取り込みが小さく、定常状態に達する時間は短い。②MAC:皮膚切開時に50%の人が体動しない1気圧での麻酔最小肺胞濃度のことで、それぞれの麻酔薬の強さを示す。MACが高いと、高い吸入麻酔濃度が必要となる。 セボフルランの「血液/ガス分配係数」は0.63と小さい。MACは成人で1.71%、小児で2.43%である。年齢・体格による個人差があり注意が必要である。剤形と投与方法の例◦250mLの容器に液体として入っている。◦導入濃度:0.5〜5.0%、維持濃度:4.0%以下◦酸素(p.8)あるいは酸素と亜酸化窒素(p.6)を併用して使用副作用◦ 悪心・嘔吐:全身麻酔後の悪心・嘔吐のリスクが高い患者(若い女性、乗り物酔いしやすい、非喫煙者、過去の全身麻酔で悪心・嘔吐があったなど)では、より影響が少ないプロポフォール(p.12)、ミダゾラム(p.20)などの静脈麻酔薬が選択されることもある。◦ 末梢血管拡張による血圧低下2
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