◦ QT延長:心筋リズムに影響を与え、QT間隔を延長させる。特に、QT延長症候群の患者に使用する場合は致死的不整脈に移行する可能性がある。プロポフォールはQT間隔に影響を与えず安全に使用できるとされている。◦ 悪性高熱症:頻度は少ないが、筋硬直、頻脈、不整脈、血圧不安定、発熱などの症状をきたし命にかかわることもある重篤な疾患である。吸入麻酔薬は原因薬剤の一つであり、症状出現時には使用の中止、プロポフォールなどの静脈麻酔薬への変更が必要である。禁忌 悪性高熱及びその疑いのある患者、QT延長症候群血管内治療とどうかかわる?◦ 全身麻酔の導入と維持に使用される。◦ 速やかに麻酔導入可能、気道刺激性が少ないなどの利点から、術前に点滴が取れない小児などの患者へのマスクによる麻酔の緩徐導入に好んで用いられる。◦ QT間隔の延長により検査・治療が正確に行えない可能性があるため、カテーテルアブレーションなどの不整脈治療で用いることは少なく、プロポフォールなどの静脈麻酔薬を使用する。◦ 脳血管内治療などで運動誘発電位/感覚誘発電位/視覚誘発電位(MEP;Motor evoked potential/SEP;Sensor evoked potential/VEP;Visual evoked potential)といった神経刺激を用いたモニタリングを使用する場合は、セボフルランなどの吸入麻酔薬は結果に大きく影響するため正確な結果がでないとされている。これらのモニタリングを行う際は、影響の少ないプロポフォール、ケタミン、フェンタニル、レミフェンタニルなどの静脈麻酔薬を使用する。血管内治療で用いる際の注意ポイント◦ 「血液/ガス分配係数」が小さいため、吸入濃度を増加させたときの血中セボフルラン濃度の上昇は急激であり、呼吸数・SpO2低下や末梢血管拡張による血圧低下を生じやすい。◦悪性高熱症を疑う所見や家族歴がある場合は、使用中止する。(溝渕有助、岩崎達雄)治療前後でナースが気をつけること ●覚醒後に悪心・嘔吐が生じることがあり、声かけや体位変換による誤嚥の予防や、制吐薬(メトクロプラミドなど)の投与が必要となることがある。 ●吸入を終了した後も、麻酔ガスの効果が組織や血中に残存していることがあるため、呼吸数、SpO2、呼吸様式、脈拍数、血圧などの慎重な観察が必要である。1章1吸入麻酔薬1章 麻酔関連薬 3
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