第1章●オピオイド鎮痛薬16 YORi-SOUがんナーシング2019年別冊オピオイドとはオピオイドとはオピオイド受容体と親和性を示す物質の総称です。オピオイド受容体には、mミュー、dデルタおよびkカッパという種類があることがわかっていて、オピオイドがこれらに結合することでオピオイドの薬理作用が発揮されます。どの受容体に強く結合するか、またm、d、kという受容体もさらに細分化されていると考えられていて、それらによってオピオイドの薬理作用の違いが出てきます。多くのオピオイドによる鎮痛作用はおもにm受容体を介して発現されており、これは呼吸抑制作用、鎮咳作用、催吐作用、消化管運動抑制作用などにもかかわっています。dとk受容体も鎮痛作用にかかわっていますが、呼吸抑制作用はm受容体よりも弱いです。またk受容体はm受容体による多幸感に対して嫌悪感を引き起こし、モルヒネなどによる精神依存を抑制しています(表1)。オピオイド鎮痛薬はWHO三段階除痛ラダー(以下、WHOラダー)において第二、第三段階に位置付けられています。オピオイドの種類と特徴日本国内で現在使用可能なオピオイド製剤の一覧を示します(表2)。軽度〜中等度の痛みに用いるオピオイド(弱オピオイド)WHOラダー第二段階に属するオピオイドには、コデイン、ブプレノルフィン、トラマドールがあります。またWHOで推奨はされていませんがペンタゾシンもこのグループです。中等度〜高度の痛みに用いるオピオイド(強オピオイド)WHOラダー第三段階に属するオピオイドで、日本で代表的なものはモルヒネ、オキシコドン、フェンタニルですが、ヒドロモルフォンも発売されました。またこれらで鎮痛困難な場合の選択肢としてのメサドンもあります。そのほかのオピオイドタペンタドールはWHOの基本リストには入っていませんが、オピオイドの作用とノルアドレナリン取り込み阻害作用による鎮痛補助薬的作用を併せ持った鎮痛薬です。オピオイドの選択オピオイドを始めるときには、いろいろな選択肢のなかからどれを選べばよいのでしょうか。日本緩和医療学会の「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」1)では「患者の状態(可能な投与経路、痛み以外の併存症状、痛みの強さなど)から、個々の患者に合わせたオピオイドを選択する」とオピオイド鎮痛薬を用いた薬物治療の進め方受容体タイプ薬理作用μオピオイド受容体δオピオイド受容体κオピオイド受容体鎮痛作用+++++鎮静作用+++++消化管運動抑制++++呼吸抑制+--咳嗽反射抑制+-(悪化)+情動性++-(嫌悪感)徐脈+-(頻脈)+利尿作用-(抗利尿)-+オピオイド受容体の作用表1文献1より一部引用改変
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