YORi-SOUがんナーシング2019年別冊 17第1章 オピオイド鎮痛薬書かれています。オピオイドの選択肢は増えていますが、一般臨床の場面では、まずはモルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、コデイン、トラマドールを使いこなせるようになることをお勧めします。必ずしも弱オピオイドから始めなければならないわけではなく、実臨床ではオキシコンチン®10mgから開始するということが広く行われています。中等度以上の疼痛には強オピオイドから開始するほうが鎮痛効果が高いです2)。トラマドールは麻薬指定されていないので、麻薬に抵抗がある患者(や家族)には導入しやすい場合があります。コデインは咳など呼吸器症状への導入として使用できます。日本で一般的な強オピオイドであるモルヒネ、オキシコドン、フェンタニルでは、鎮痛に関してどのオピオイドが優位という根拠はありません。副作用については、モルヒネとオキシコドンがほぼ同等で、フェンタニルはモルヒネに比べて便秘が少ないということがわかっています。またモルヒネは、代謝産物によって腎機能が低下している患者の場合には眠気や呼吸抑制が強く出る可能性がありますが、咳や呼吸困難などの呼吸器症状に対しては、現時点で唯一効果が証明されている強オピオイドです。これらの情報を踏まえて、図1のような選択が考えられます。ヒドロモルフォンはオキシコドンと比べて鎮痛効果は劣っていません。腎機能障害でモルヒネが使用しづらいときなどにオキシコドン以外のもう一つの選択肢としての利用が考えられます。タペンタドールは、鎮痛補助薬の作用を単剤でカバーしたい場合や消化器症状を少なくしたい場合に、使用が考えられます。投与経路オピオイドの投与経路は経口が基本ですが、嚥下困難、消化管通剤形投与経路受容体への結合のしやすさ特徴μδκペンタゾシン錠注経口皮下筋肉内+++++・精神依存を形成しやすい・併用ではほかのオピオイドの効果を弱める可能性コデイン散・錠経口+・肝臓で代謝され一部がモルヒネに変化・鎮咳効果があるブプレノルフィン坐剤注直腸内皮下・筋肉内++++++++・併用では他のオピオイドの効果を弱める可能性トラマドール錠注経口皮下・筋肉内+・代謝産物がμ受容体に作用・SNRI様の鎮痛効果も併せ持つモルヒネ末・内服液・細粒・カプセル坐剤注経口直腸内皮下・静脈内・硬膜外・クモ膜下+++・経験値が高い・剤型が豊富・腎機能障害患者では傾眠や呼吸抑制が生じやすい・呼吸器症状にも有効オキシコドン散・錠注経口皮下・静脈内+++・モルヒネとほぼ同じ作用だが、腎機能障害による影響を受けにくいフェンタニル錠貼付剤注口腔粘膜経皮皮下・静脈内・硬膜外・クモ膜下+++・便秘が少ないヒドロモルフォン錠注経口皮下・静脈内+++・モルヒネとほぼ同じ作用だが、腎機能障害による影響を受けにくいメサドン錠経口+++・QT延長に伴う致死性不整脈の危険性タペンタドール錠経口+・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用による鎮痛効果も併せ持つ・消化器症状が少ない可能性国内で使用可能なオピオイド製剤(2019年3月現在)表2文献1より一部引用改変
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