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2019年5月吉日はじめに 緩和ケアの黎明期、1980年代から90年前半にかけて、緩和ケアで使用する薬剤としてモルヒネ、アセトアミノフェン、ジクロフェナク(ボルタレン®)、メトクロプラミド(プリンペラン®)、ハロペリドール(セレネース®)など、限られた薬剤を知っていればよかったのは今は昔のことである。それから約30年、初版刊行からも5年たち、鎮静薬については、2017年にヒドロモルフォンの内服薬が、2018年にはその注射薬が販売された(国際的には新薬というわけではないが)。また21世紀に開発された最も新しい鎮痛機序のオピオイドであるタペンタドール(タペンタ®)も上市されるなど、つねに新しい薬剤が登場している。 また鎮痛補助薬としては、ガバペンチン誘導体であるリリカ®が国際的にも鎮痛補助薬の使用方法を一変させたが、その後、デュロキセチン(サインバルタ®)ががんに限らず多様な原因の疼痛を緩和することが明らかとなり、使用されることが多くなっている。 オピオイドの副作用に対する対症療法薬として、消化器系薬や抗精神病薬などに大きな変化はなかったが、下剤についてはこの数年で、新しい便秘薬、特にオピオイド受容体に拮抗するPAMORA(末梢性μオピオイド受容体拮抗薬)であるナルデメジン(スインプロイク®)が、国内開発の薬剤として国際的に販売されている。 緩和ケアを提供するうえで「薬の知識」はそのすべてでは確かにない。初版と同様になるが、患者の心配が何かをきちんと把握すること、心配に対して可能な「薬以外の」できることを考えることは、今も昔も緩和ケアの根源をなすものである。 一方で、次から次へと投入される緩和ケアの薬剤についての正確な知識を持っていないことで患者に不利益を与えたり、もっと効果的に患者の苦痛を和らげられるにもかかわらず知識が足りないために緩和が得られないことがあってはならないという基本的な姿勢も、変わっていない。 改訂では、新規に使用されるようになった薬剤を加えて、使っていただきやすいよう全面的に情報を整理しなおしている。本書が、緩和ケアの多種多様な薬剤を使用するうえでのまとまった知識を、わかりやすく提供することに役立てば幸いである。聖隷三方原病院 副院長・緩和支持治療科 部長森田 達也

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