111時間目 がんの痛みを知るうところにあるかと思います。 緩和ケアには「スピリチュアル」という言葉がよく出てくるのですが、スピリチュアルばかりにいっても患者さんの痛みは全然取れません。「痛いの痛いの飛んでいけ」と背中をさすられて「優しくされた、良かった」と思うのは緩和ケアではないですね。痛みを取る、症状をしっかり取る、精神的な面で眠れない状況を眠れるようにしてあげるなどしたうえで、さらにスピリチュアルな面もフォローしてあげるのが緩和ケアです。根本を見失わずに緩和ケアを提供するということを忘れてはいけないと思います。がん患者の苦痛についての調査 少し古いのですが、兵庫医大にいらっしゃった村川和重先生の2002年の研究1)を紹介しましょう。その頃はモルヒネしかなかったのですが、モルヒネを使っている患者さん97人に「あなたは、痛みはありますか?」とたずねています。すると8割の方は「痛みがあります」と答えました。当時はあまりオピオイドをうまく使えていなかったのかもしれませんが、実際には8割の方が「オピオイドを使っていても痛い」と答えていたという事実があるのです。 では、日本のがん患者さん全体でどれぐらいの方が痛みを感じているのでしょうか? 厚生労働省の2004年のかなり大規模な調査2)によると、7割の方は末期になると痛みを経験しているということが分かっています。 日本は欧米諸国に比べると、オピオイド、すなわち医療用麻薬の消費量がものすごく少ないと言われています。そのため、麻薬をあまり使わないから痛みが取れないのではないかと思ってしまいますが、イギリスの大規模調査3)でも日本と状況はあまり変わりませんでした。イギリスでも6割が痛みを取れないでいたのです。
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