302180200
17/18

131時間目 がんの痛みを知るす(図1-2)。 ではなぜ、痛みをがまんするべきだと考えるのか? これはいわば国民性です。日本で育って日本の教育を受けている皆さんや、皆さんがみる患者さんは痛みをがまんするべきだという考え方が自然に身に付いているのです。 近代の日本における有名なスローガンとして、「欲しがりません。勝つまでは」があります。「がまんしましょう。今は苦しくても、がまんして勝利を勝ち取るんですよ」という戦時中に使われていたスローガンを、現代に生きる皆さんでさえ知ってますよね。つまり「がまんすべきだ」という考えが、脈々と伝えられているんです。これはもう、日本の国民性といえるでしょう。 例えば、子どもが転んだときに「がまんしなさい」「男の子でしょ。泣いちゃダメ」と言いませんか? がまんして泣かなかったら「偉いね」と褒めたことありませんか? ありますよね。これは日本だけの慣習です。 日本に半年ぐらい留学したことがある中国人の医師が「幼い子どもがパタンと転んだ後、日本人の子どもは泣かない。痛いんだろうけど、グッとがまんしてしばらくしてから立ち上がる。どういう教育をしているんだ」とビックリしていました。 僕がアメリカで研修していたときにこんな経験もしています。検査で注射や採血をされるときに、表情ひとつ変えないのは日本で育った日本人の駐在員と日本人だけだったんです。もちろん日本でも「ウーッ」とやる人もたくさんいますが、なるべく表情に出さないようにしていますし、痛くてもグッとがまんしていますよね。海外にはこんな人はあまりいません。 では人種的に日本人が痛みに強いのかというと、そういうわけでもないのです。アメリカで育った日系人は「Wow、Wow」などと言って、ものすごく痛がります。あくまで、日本で育った人たちががまんすることに長

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る