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10 第1章 臨床現場では、抗菌薬を使用しなくてもよいことが判っているのに、抗菌薬を投与したくなる衝動に駆られることがあります。これは決して、「耐性菌を作り出してやろう」とか、「熱があれば何でもかんでも抗菌薬を投与してしまおう」などと考えている訳ではありません。「患者の苦痛を早く取り除いてあげたい」とか、「おそらくウイルス性であろうが、万が一、細菌性であった場合、患者に不利になる」と言った患者中心の医療のなかでの衝動によるものです。善意の衝動といえます。 こういった衝動に、どの様にして打ち勝つかは「このような状況では、抗菌薬は基本的に必要ない!」という自信をどの程度持っているかに左右されます。ただ、何となく「抗菌薬は不要のことが多い」程度の思いであれば、少々の圧力で挫けてしまいます。しかし、「抗菌薬が必要なことはほとんどない!」ということが頭に叩き込まれていれば、よほどの覚悟がない限り、抗菌薬を処方しないのです。 多くの人々(医療者も含む)は抗菌薬の有用性と有害性を比較するとき、有害性について極めて低く見積る傾向にあります。しかし、実際には人々が思っている以上に抗菌薬には薬物有害事象が多いのです。 CDCは「Get Smart:Know When Antibiotics Work(賢くなろう:抗菌薬が機能する時を知ろう)」のキャンペーンのなかで、抗菌薬の薬物有害事象について記述しています1)。それによると、薬物有害事象で救急外来に受診抗菌薬を投与してほしくない5つの疾患第1章

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