はじめに 1996年にCDCが標準予防策を提唱してから、CDCガイドラインは日本の医療現場に怒涛のように流れ込みました。現在、日本の医療施設で行われている感染対策のほとんどがCDCガイドラインや推奨の影響を受けていると言っても過言ではないでしょう。CDCはさまざまな「斬新な推奨」「眼から鱗のような推奨」を公開していますが、それらをよくみてみると、日常的な一般常識の延長線上にあるような気がします。 医療施設は実に特殊な環境です。人間の体に針を刺したり、メスで切ったり、挙句の果てには人の意識を奪ってしまうような麻酔薬まで使用します。このようなことを日常生活で行ったら、必ず逮捕され、警察のお世話になることと思います。しかし、医療従事者は特殊な環境に長年勤務していることによって、一般の常識からかけ離れてしまい、「常識的ではない常識」にどっぷりと浸かってしまうのです。 たとえば、靴を購入するときには、靴屋に行って、靴に直接足を入れて、そのサイズに足が合うかどうかを確かめるのが世間の常識です。靴のサイズが足に比較して大きければ歩きにくく、容易に靴擦れするでしょう。逆に、小さければ、足が痛くなってしまいます。かならず、足にフィットするかどうかの確認をします。しかし、結核対策で用いるN95マスクが顔面にフィットしているかどうかを確かめない医療施設が数多くあるのです。N95マスクは、マスクと顔面の隙間から空気が流れ込めば、結核、麻疹、水痘などの病原体が入り込んでしまいます。それを避けるためにフィットテストするのですが、それを実施していないのです。 道路工事や建築現場で仕事をしている人々は材木やコンクリートなどによって足が傷つけられないように安全靴を装着しています。夏の暑い日や梅
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