第 章変わってきた患者教育14 患者さんの生活習慣でよく出てくるものに、「タバコがやめられない」というのがあります。急性期においても、「タバコをやめてください」と指導すると、入院している期間はやめていたりする。けれども、「これだけ死にそうな思いをしたし、また、入院中はやめられたのだから、これからも禁煙するだろう」などと考えていると大間違いということがあります。のど元過ぎればなんとやらで、退院してしばらくしたら「やっぱり吸いたくなった」と、吸い始める人がいます。ましてや糖尿病のような慢性病の患者さんの場合、よほど切羽詰まったり強い意志をもっていたりしなければ、禁煙はなかなか難しいという現状があります。 糖尿病患者に対しては、食事のこと、運動のこと、喫煙のことなど、生活習慣の改善にかかわっていくわけですが、そのとき医療者としては、「生活上、たったこれだけ変えればいいじゃないか」というように考えがちです。けれども実際には、「たったこれだけ」がなかなか変えられないという患者さんが多く、かかわり方に四苦八苦しているというのが現実だと思います。 また、私たちは患者さんの体のことを考えて一生懸命に話をするわけですが、うるさがられたり、ときには怒られたりする。「あなたの体のことを考えて話しているのに」と、理不尽な思いがします。 どういうふうにすれば、患者さんの気持ちを損なわずよい方向に導いていけるだろうか――。これが、糖尿病の患者さんに接している私たちにとってのいちばんの課題です。-1患者教育の変遷「指導」から「援助」へ糖尿病患者への教育の難しさ
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