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第 章変わってきた患者教育16りに個別にかかわらなければいけないということです。たしかに喫煙はよくない。けれど、それをやめるかどうかは本人の問題なのです。本人が禁煙したいのか、したくないのか。あるいは本人が「禁煙できそう」と思うか、思えないでいるか。私たちはこれまで、「こうしなければいけませんよ」と、患者さんを指導してきました。そうではなく、患者さんの立場に立ったかかわり方をしていくことが必要だと思います。 健康教育とか患者教育といったとき、その考え方は「指導型」から「学習援助型」に大きく変わってきたといわれています。もっとも、これは学問上のことで、現実の患者教育において変わったといえるかどうかは別です。 従来の患者教育は、医学モデルで行われてきました。指導型です。医療者の論理に立って患者さんを指導していく。私も、看護学校ではこの指導型を習いました。医療者が「この人は、こういうふうなことをしたほうがよい」と思うことを患者さんに指導するわけです。そして患者さんは、指導されたことを守るものだという論理です。このとき私たち医療者側に求められるのは、正確な知識・技術です。その患者さんに必要だと思われる知識・技術をこちらがもって、それを教えていくという図式になります。 指導型は、急性疾患や感染症に対する患者教育、健康教育には有効だけれども、慢性病の患者さんに対しては、必ずしも有効ではありません。前述の禁煙をしない、できない患者さんのように、指導型の教育では行動を変えない人もたくさんいるからです。そこで1980年代ぐらいから、学習援助型といわれるアプローチ法が出てきました。 学問上はすでに40年ほども前からこの学習援助型という考え方が主流になっています。そしてこのなかで提唱されているのが、「学習」です。指導ではなくて学習。つまり、主体はあくまでも患者さんであるのだから、指導ではなく、学習や援助を行っていくべきだというように変わってきているのです。この変化のことを「健康教育のパラダイムシフト」といいます。 「パラダイム」というのは、そのときどきの、その分野における常識みたいな、みんなが「これが当たり前」と思うような考え方のことです。それが「シフト」、指導者からパートナーへ

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