5 初版を上梓してから6年が経ちました。講演内容を話し言葉のまま原稿にしてあるためか、内容がとてもわかりやすいと臨床の看護師さんたちから評価をいただいてきました。理論を敬遠しがちだった臨床の方がたからもよい評価をもらったことは、学習支援型の患者教育を推進したいと願っている私にとっては、とてもうれしいことです。 本書はもともと研修や講演の内容を素材としてまとめたものですが、この6年の間に私の講演もバージョンアップしてきましたので、今回改訂することにしました。おもな改訂ポイントは、本書のタイトルでもある「セルフマネジメント」について、症状マネジメント・徴候マネジメント・ストレスマネジメントに分けて、より詳細に説明したことです。「セルフマネジメント」は、あくまでも患者さんの患者さんによる患者さんのための病気との付き合い方の方法だと考えています。具体的な取り組みのイメージがつくとうれしいです。 また、患者教育の視点として、ケアリングの概念を加えました。ノディングスはケアする人の意識の特徴を「専心没頭」と「動機の転移」と述べています。看護師(ケアする人)が糖尿病患者さん(ケアされる人)に対して、このような意識を持ち続けることができれば、患者さんは病気に対して前向きな反応をするようになると思います。ただ、忙しい臨床現場のなかで、なかなかそうした意識を維持しにくいことも現実です。エンパワメントについては、初版では患者さんに対してのエンパワメントしか書かなかったのですが、改訂版では「ピアエンパワメント」と「セルフエンパワメント」についての記載を加えました。患者さんをエンパワメントする前に、まず看護師である自分がエンパワメントされることが重要だと思うからです。 糖尿病患者数は国をあげた取り組みにもかかわらず、増加の一途をたどっています。新しい治療法も次つぎと開発され、その効果への期待が高まっています。とはいえ、患者さんが自分の病気を自分のこととしてとらえマネジメントしていく力を高める必要性は減少するわけではありません。糖尿病患者さんへのアプローチの支援書として本書を活用していただけることを願っております。 2010年1月安酸史子改訂にあたって
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