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7人にたくさんかかわってきました。でもそういう手ごわい患者さんが、自分のことをいろいろと話してくれたり、できないながらもなんとかできそうな目標をいっしょに設定して行動を少しずつ変えてくれたりする姿を見ると、なんとも言えないうれしさとやりがいを感じるのも確かです。本書ではそうしたノウハウ、すなわち糖尿病の患者さんに対してどのような心理的アプローチが有効だろうか、ということについて紹介しています。 心理的アプローチの方法論としては、おもにエンパワメントと自己効力を取り上げました。いろいろな理論がありますが、私自身が行ってうまくいったなと感じるアプローチにもっとも合致している理論だと感じているからです。個人の経験則でしかないことはなかなか伝達しにくいものですが、理論を適用することで説明しやすくなりますし、効果的に後輩指導ができると考えています。 第1章では、これまで私たち医療者が患者さんをどうとらえてきたかを振り返り、今後はどう接していくべきかを考えてみました。第2章では、患者さんの気持ちを理解する手がかりとなる考え方を2つあげています。第3章、第4章では、患者さんが積極的に保健行動をとってくれるようにするにはどんなアプローチをしていけばよいかということで、エンパワメントと自己効力を取り上げました。そして第5章では、エンパワメントや自己効力を用いた患者さんのセルフマネジメント能力を引き出す術についての私の考え方、取り組み方をご紹介しました。 私は「安酸先生の話は講演を聞くとよくわかるけれど、文章を読んだだけではわかりにくい」と言われることがよくありました。理論を解説した本は取っつきにくいと言われることが多いので、今回はできるだけわかりやすいようにと、3日間のワークショップでの講演内容を素材として話し言葉のままでまとめ直しました。看護師のみなさんが患者さんの立場に立ったテーラーメイドの患者教育を考え、実践できるようになるために、少しでもこの本がお役に立てば、これ以上の喜びはありません。 2003年12月安酸史子

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