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8第10章教育的実践力を高めるモデル「看護の教育的関わりモデルver. 8.0」の概要、開発プロセス 慢性疾患、特に生活習慣病は、病気をコントロールするために患者による治療の自己管理を必要とします。多くの患者は、生活習慣病の治療に薬を飲むだけでなく、食事療法や運動が必要なことは知っていますが、詳しい内容や方法を知っているわけではありません。患者に自己管理の方法を教えるのが患者教育ですが、その成否はいかに看護師が患者の生活に即した内容・方法とするかに左右されると言っても過言ではありません。 しかし患者教育は、残念なことにどのように教えるかに関して長い間検討されず、医師や看護師、栄養士らが専門教育で受けてきた系統的な教育方法で行われてきました。例えば糖尿病教育は、「糖尿病とは」から始まり、病態、診断、治療、治療に対する看護の順番で知識・情報を提供するという情報提供型の方法でした。しかし、患者は知識を得ることはできるものの、生活習慣を修正するまでには至らず、短期の行動変容はあっても、半年、1年もすれば元の生活習慣に戻ってしまう患者がほとんどでした。 このように、自己管理ができず疾患のコントロール状態が悪いと、多くの医師や看護師は、できないのは患者のせいだと、患者を責めたものでした。時には「意欲のない患者」とレッテルを貼って済ませてしまいがちでした。 なぜ、患者は自己管理ができないのか、どうすれば患者が行動変容し、自己管理ができるようになるのか。この命題は、患者教育に関わる医療者の共通の課題でした。1)患者教育研究会の発足 このように患者教育がまだ混とんとしていた1993年、当時、日本で唯一の正式な看護の学術団体として日本学術会議から承認されていた日本看護科学学会では、研究活動委員会が看護界で研究を推進すべきテーマを検討していました。委員会は、それを会員へのアンケート調査で抽出し、1994年に研究討論会をテーマ別に開催しました。「患者教育、患者指導方法」は、「看護教育の教育技術」な……どうすれば効果的な患者教育になるのか1……「看護の教育的関わりモデル」の成り立ち2第章1

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