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80 夏川さんは40歳の男性で、母親と2人暮らしです。軽度の精神発達遅滞、うつ病の既往があり、障害者就労施設で働いています。自宅近くにある一般病院で2型糖尿病と診断されましたが、医師への不信感のために通院を中断し、半年後にA糖尿病クリニックを受診しました。Aクリニック初診時の空腹時血糖は約600mg/dL、HbA1c 13%でしたが、夏川さんは入院もインスリン注射も拒否しました。栄養指導は半年前の診断時に受け、1日1,800kcalの指示でした。尿ケトン体が陰性でインスリン分泌能が比較的保たれていたので、医師は食事療法と経口血糖降下薬にて経過観察としました。 2週間後の受診時、随時血糖は390mg/dLでした。医師は血糖が是正傾向にあると判断して処方内容は変更せず、食事療法の実施状況を確認するなどの療養指導をTK看護師に依頼しました。診察後、TK看護師は夏川さんと同伴していた母親の2人へ声をかけ、療養指導室に案内しました。 面接では、まず母親が堰を切ったように、これまでの食生活について話し始めました。夜中にスナック菓子を食べジュースを多飲していたのでこのような事態になってしまったと、興奮した様子で一気に話しました。夏川さんを責めるように話す母親の隣で、夏川さんは背中を丸め身体を小さくして話を聞いていました。事例母親に叱責され萎縮していた夏川さん

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